欺瞞(ぎまん)
「名」(スル)あざむくこと。だますこと。「欺瞞に満ちた言動」「国民を欺瞞する」 <国語辞典>
難しい漢字ですが、わりとよく聞く言葉です。反対語はないようですが、近い意味では「誠実」があたるでしょうか。
思えば、世の中、欺瞞に満ちているかと。
ある例えですが、
公園でごみをポイ捨てした人に注意したところ、その人はこう言って自己弁護しました。
「皆がゴミを捨てなかったら、ごみを拾って生計を立てている人の仕事を無くしてしまう」
これ、一理ある意見でしょうか?
いえ、これこそ欺瞞です。
この人は本当に、清掃業界の雇用問題を憂いているのでしょうか? いえ、ただ単にゴミ箱まで捨てに行くのが面倒なだけですよね。それを、都合よく他問題にすり替えただけです。この手の人は性根がズルいと思います。ひどいと、オレオレ詐欺犯が「俺たちは、停滞している老人の持つお金を市場に引き出して、経済を活性化している」と自己弁護するに至ります。
他の例、かつて聞いた話です・・暴力を振るう夫に対して、疲れて心神が麻痺した奥さんは、「子供の為に我慢しなければ」とすり替えます。本来は子供の為に夫だけではなく他者とも相談し、関係改善を図る、改善が無理なら離婚を検討する、これが正論です。子供を言い訳に逃避していることこそ、問題の本質から逸れています。これも、家族を理由とした「すり替え型」欺瞞の一種です。
さらに疲れ果てた奥さんは、「私にも悪いところがあるから(殴られるのは)仕方ない」と、とんでもない解釈に陥ってしまいます。これは、自らを騙す「自己欺瞞」の行き着く先、少し病気に近い心理状態です。
いずれにしても、家族の問題に関する欺瞞は悲しい欺瞞です。
また、ある会社が不正取引を処罰されたとして・・ルール違反の商売の理由を、「業界のルールが整備されていないから悪いのだ」と反論します。さらに、「業界の為にも処分は容認できない」などと、正当性を主張します。一見、世の中の為に戦っているように見えますが、これも、問題のすり替えです。この会社は業界の向上の為に、不正をしたわけでも、立ち上がったわけでもありません。本当の理由は、単に儲ける為にやったことです。不正を咎められたので、(動機を欺瞞して)声を上げたに過ぎません。まさに「すり替え型」欺瞞です。業界の為に立ち上がるのであれば、最初から別の方法があったはずです。
まぁ、この手の会社はすべて計算ずく、わかってやっている確信犯ですけど。言わば、周囲へのポーズとしての欺瞞構成でしょうか。
やはり、欺瞞を正当化してはいけないと思います。いずれ、周囲をごまかす事、自分に嘘をつく事に慣れてしまいます。とくに、自分に向けられた欺瞞ほど恐ろしいものはありません。だんだん、嘘が無自覚化していき、本当と思い込みます。自分を嘘にまみれた虚像化していくと・・惨めな結末しか待っていないと思います。
しかし、誰しも多少の嘘、欺瞞がなければ生きていけません。自分にも欺瞞はないか自問する次第です。誰に対しても、そして、自分に対しても正直で誠実を貫いているか?
本日は内省的な記事ですみません。