(まず前日の記事を読んで下さい)

 

<若手弁護士A先生> クレサラ方式の解決・・・う~ん、考えさせられますね。大量受任と早期解決、確かに事務所を経営する以上、経営効率は大事です。しかし依頼者に対して誠実な仕事とは言えませんね。

<秋葉> では誠実な仕事でありながら早期解決を達成している事務所を紹介します。

 (C先生) C先生とは3年以上一緒に仕事をしています。交通事故を専門に受任しており、とくに14級9号を大量に解決してきました。C先生は赤本の満額獲得を必須目標として取り組んでいます。14級9号での平均的な賠償獲得額は赤本基準で300万前後です。   C先生は最初に損保会社に賠償提示を行い、損保の回答が「先生、訴外交渉なら提示金額の70%~80%でどうでしょう?」とくれば迷わず、「請求額から歩み寄る気はありません。交通事故紛争センターの斡旋にふしましょう」と宣戦布告します。また請求額や争点の性質からから裁判を選択することもあります。対して損保会社は「うっ、この事務所は(妥協解決に)乗ってこないな・・・」と印象を持ちます。  それではと、損保会社は紛争センターにおいて全力で応戦してきます。しかし紛争センターの性質上、斡旋弁護士は既に認定された後遺障害等級を審議なく踏襲する傾向にあり、細かな論点も時間の関係から避けがちです。もちろんC先生、ここでも妥協的な斡旋なら裁判を辞さない姿勢を堅持します。およそ月1回合計3~4回の協議でほぼ赤本基準の斡旋案に落ち着きます。損保側は紛争センターの斡旋案を尊重する立場なので、余程の反論がない限り飲みます。まれに審査会に進みますが、大きな変更は極めて限られたケースとなります。

 費用対効果で見ると、交渉解決なら1~2か月で解決のところ紛争センターの斡旋により3~4か月解決が伸びてしまいます。しかし依頼者が手にする賠償金は、8割の妥協的交渉解決に比し60万ほど増額します。3か月解決が遅れる事と60万、どっちがいいか?依頼者は迷わず60万を待ちます。

 こうしてC先生は100件を超える事案を紛争センターで解決させました。さて、こうなるとある変化が起きます。損保側は「C弁護士は赤本満額を譲らない→紛争センターに持ち込まれるので面倒だし時間の無駄→しょうがない満額支払うか」となります。C先生は主要損保からこのように評価されます。こうして早期交渉解決で満額獲得できる=実力ある弁護士となったのです。  現在C先生は受任の70%を交渉にて満額獲得しています。譲らない損保社には裁判、紛争センターの斡旋解決へ進めます。それが残りの30%になります。通販系損保も支払いを渋るので30%に入ります。結果としてクレサラ方式事務所に劣らない解決スピードとなりました。こうして交渉力(実力)と早期解決(経営効率)の両方を実現しているのです。    経営効率主義のクレサラ方式解決事務所:β事務所と赤本満額解決主義の実力交渉C先生、同じ交通事故弁護士でも違いが生じるのです。損保会社はこのC先生を手ごわい相手と感じ、逆に昨日のβ事務所へは足元を見た対応を続けます。そして依頼者は迷わずC先生を選ぶべきです。

 さて、A先生はどちらの道を進みますか?

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 昨年、某法人弁護士事務所にて事務所内研修の質疑応答から・・・

 

テーマ:交通事故の交渉解決について

Q、<若手弁護士A先生> 秋葉先生、保険会社と交渉を開始すると、まず「訴外交渉(裁判をしないで交渉解決)なら赤本の70%、80%でどうか」と回答しくることが多いようです。依頼者の希望で早期解決を目指すなら、多少妥協してもいいのではないでしょうか? 

A、<秋葉> この保険会社への対応如何で交通事故業務における”弁護士事務所の格”を決定づけることになります。実在する2つの事務所のケースから説明しましょう。

(β法律事務所)クレサラ業務(過払い金返還請求等)を中心とした大手法人事務所β、クレサラ業務の減少に伴い、交通事故にも力を入れ始めました。この事務所の交通事故解決はほとんどが交渉解決です。まず賠償金請求書を保険会社に送り、赤本基準の70%位の回答が来ると、それでOKをだして示談成立します。多少は上乗せ交渉をするとしても、難しい交渉一切抜き、超スピード解決です。

 ちなみに追突事故、主婦でむち打ち14級9号の案件について、賠償金を赤本基準で計算すると320万円ほどになります。この7~8割解決ですと230万~260万円です。赤本の満額で解決する金額から60万~90万円少ないことになります。β事務所の弁護士は依頼者に「相手保険会社から250万で回答を受けました。急いで解決するならこの金額です。」と説明します。満額は320万円になることについて依頼者へは言いません。そして多くの依頼者は「(解決の相場がわからないので)先生にお任せします」と答えます。何故なら保険会社は最初150万円位の提示をしてきましたので「100万円もUPした!さすがβ先生」と思います。  こうして簡単に早期示談解決が量産されていきます。事務は弁護士⇒保険会社、相互にFAXや文書のやり取りをおよそ3往復で終わります。そうです似ています、クレサラ業務に・・・。

 毎月、莫大な広告費をかけて交通事故被害者を集め、裁判などを避けてどんどんこの方式で解決していきます。受任量を増やし、獲得金額より処理速度を重視します。経営効率としては良いでしょう。このような事務所に対し、保険会社は「先生、今回も7掛けでいかがでしょうか?」と水を向けてきます。保険会社も赤本満額から30%支払い削減でき、早期に案件処理ができますので歓迎です。それに敵であるはずの弁護士が「これ位の金額で手を打つべき」と被害者を説得してくれる(?)形となり、大助かり。このように損保会社とβ事務所は利害が一致するのです。まるで示し合わせたようなぬるい交渉で保険会社は「β事務所は7割が相場!」との対応をずっと続けていきます。

 なにか腑に落ちない話ですが、早期解決だけは達成しています。しかし一方で赤本の満額を毎度普通に獲得している事務所も存在します。しかも解決スピードも決して劣りません。 (明日に続く)

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 昨日からつづき・・・

 

Z先生:「しかし、なんといっても早期解決を目指すべきでは・・・」

秋葉:「もちろん被害者の希望が白黒はっきりした決着や、遅延利息5%+弁護士費用10%の増額よりも一刻も早い解決を望むのならそうです。であれば、そもそも裁判などせずに交渉もしくは紛争センターで解決する道がベターと思いますが・・・。  ここである弁護士先生を例にとります。この先生、判決まで徹底的に争うことで有名で、保険会社もこの先生が手強いことを知っています。昨年、私が担当した後遺障害3級被害者の対J○社案件をこの先生に引き継いだところ、J○社は請求額全額をあっさり認め、争わずさっさと保険金を支払いました。裁判で負けて、遅延利息や弁護士費用まで取られるくらいなら・・という判断です。  普段から判決まで争う姿勢の弁護士、また判例実績のある弁護士は『戦わずして勝つ』早期解決を成し遂げていますよ。結局のところ本気で判決による解決を基本姿勢にしている弁護士を保険会社はリスペクトしています。徹底的に戦う戦略の延長線上に「和解解決」が選択肢としてある・・・これこそ交渉力と思いませんか?」

Z先生:「確かに『戦わずして「妥協金額ではなく、勝訴金額を取って」勝つ』ことが一番の理想です。」

秋葉:「Z先生も頑張ってそのような弁護士になって下さい!」

   訴えたい事はつまり、障害の立証は難しく手間がかかるので、それを避ける弁護士が多いということです。そしてZ弁護士に「和解」が普通・正当と思わせてしまった保険会社の脅威を語りたいのです。保険会社は若い弁護士を協力弁護士として雇い、交通事故の実務を依頼します。その内容は問題のある被害者への対応が中心です。まともに話し合いができない人、保険金詐欺・詐病者、心身症者などの対応ばかりです。問題のない被害者への対応、つまり被害者救済の仕事は経験しません。 またZ先生のように、ほぼ全件和解とする裁判の経験から交通事故裁判は和解が当然と認識してしまうのです。  保険会社は誰より交通事故のプロです。それに戦えるのは弁護士だけです。その弁護士がいつの間にか保険会社であたかも(骨抜きにするための?)研修、ではなく、経験をされている事実を保険会社にいるときから目の当たりにしてきました。そもそも被害者のために戦う弁護士は保険会社側から依頼される仕事をしないはずです。

 もっとも問題なのは、裁判を避けがち、起こしても全件「和解」、基本姿勢が「交渉解決」前提のクレサラ方式事務所です。その事務所は、保険会社から先に「先生、今回も赤本の7掛けでどうでしょう?」と打診される始末、これでは依頼者への背信とも思えてきます。これを早期解決などと呼んではいけないと思います。

 昨日から続く本記事は被害者に「和解が常道となってしまった交通事故裁判の実情」、それを「普通のことと認識してしまっている弁護士の多いこと」、さらに「早期解決の美名のもと、保険会社と談合的な示談をしている事務所があること」を知ってもらう目的で書きました。  単に知人の紹介で弁護士を選ぶのではなく、交通事故で戦ってくれる弁護士なのか否か・・・被害者自らがしっかり見極める必要があります。

                       

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 最近、既に弁護士に依頼済であるにもかかわらず、裁判の進行についての質問が寄せられています。もちろん賠償交渉は私の専門外です。しかし平素から座視できない交通事故裁判の現実について言及することがあります。それに対し、ある中堅弁護士Z先生からご意見をいただきました。そのZ先生との対話を(一部脚色が入りますが)披露します。  

弁護士Z先生:「秋葉先生は80%以上の交通事故裁判が和解前提で、弁護士が戦ってくれないと言いますが、交通事故で多くの場合、判決まで争っても被害者の望む決着は難しく、裁判官も和解を強く勧めます。総合的に見て和解の方が被害者の利益となるケースが多いのでないですか?」

 これは交通事故裁判の80%以上が和解となることを憂慮する私の主張への反論と思います。

秋葉:「お答えする前に、Z先生にお聞きします。先生は保険会社の顧問弁護士、もしくは協力弁護士をやっておられましたか?」

Z先生:「ええ10年やりました。ここで交通事故の実戦を積みました。交通事故の審議は長引きがちです。多くの場合、保険会社との和解がベターであると経験しました。」

秋葉:「それはある意味当然です。保険会社との交渉では全件、和解となる構造になっているからです。なぜなら保険会社の提示する賠償基準は判例と比べ、半分以下のケースが多く、勝ち負けをはっきりつけなくても、相互の歩み寄りにより、つまり和解でも被害者の得る賠償金は大幅にUPするからです。そして後遺障害の賠償金については医学的な判断が非常に難解かつ時間を要します。対して保険会社側は長年の蓄積により傷病に対して膨大なデータを持っています。それを使い顧問医の意見書としてすみやかに提出してきます。対して被害者側の弁護士は証拠=医師の意見書等の取得に苦戦し、なかなか提出してこないので審議が進みません。これを裁判官が嫌うのです。こうして和解による相互歩み寄りが推奨されるのですね。」

Z先生:「そうです。医師の協力を得ることは至難です。障害の立証は医師次第となっている現実があります。」

秋葉:「同感です。立証は医師次第です。だから私たちメディカルコーディネーターは早期から数度の医師面談を通じて、医師に対し障害の立証について協力を取り付けています。裁判に耐えうる証拠集めは何と言っても医師の診断、検査結果を引き出すことです。そして後遺障害等級の獲得がなによりの挙証となります。被害者側で医証を集めること=16条請求(被害者請求)はそのような意味もあるのです。先生は事前認定(加害者側保険会社に障害認定作業を任せる)をしていませんか?」

Z先生:「・・・・・・。しかし自賠責で認定された等級も裁判で再度検証されます。交通事故裁判はとても時間がかかります。被害者の経済的事情も考える必要から和解が良いケースもありませんか。」

秋葉:「だから16条(被害者)請求で自賠責保険金をまず確保する必要があるのですよ。話を戻しますが、もちろん経済的事情の他、戦略的に和解に持ち込むケースもあるでしょう。例えば障害と既往症の関連が強く素因減額で不利になりそうなケース、または自賠責の後遺障害認定でかなり実情より有利な等級がついてしまったケース、これら白黒つける審議に耐えられないケースには和解が有効なオプションであることに変わりありません。しかしいくらなんでも交通事故裁判全体の80%超はないでしょう。多くのケースで和解による早期解決を立証努力しないこととすり替えていませんか?障害で苦しむ依頼者は、裁判で自分の窮状を認めて欲しいのではないですか?それに答えるのが弁護士であり、それをお手伝いするのが私たちではないでしょうか」

 つづく

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 それではダメなのです。最近の例を一つお話しします。  

 被害者Aさんは交通事故で顔面に線条痕を負い、さらに目や耳、視覚・聴覚にも障害を負っています。それぞれ治療を進める傍ら、知人の紹介の弁護士β先生に解決の依頼をしました。その弁護士の対応ですが・・・。

 着手金はAさん加入の自動車保険会社C社に請求するのでご安心下さいとのことです。β先生はまず相手の保険会社ではなくC社に弁護士費用特約の請求ということで連絡をしました。しかし数か月たっても動いてくれる気配がありません。問い合わせると、「後遺障害等級が取れないと着手金の請求ができないので、早く医師に診断書を書いてもらって下さい」と言いました。しかしAさんはまだ治っていないので症状固定+後遺障害診断に進めません。それから数か月・・・。

 その後相手の保険会社Dから治療費打ち切りの打診が入りました。D社は積極的に病院に働きかけ、打ち切りを進めてしまいました。頼んでいた弁護士に問い合わせたところ、「それなら症状固定とすべきです」とすげない返事。せっかく代理人を入れたのに、まったく間に入ってくれる気配はありません。さらに数か月・・・。

 打ち切り後、病院から治療費の請求がされますが、自由診療なのでびっくりするくらいの金額です。健康保険を使いたくても、症状固定していないので病院から拒否されてしまいます。弁護士に相談しましたが、「まだ当方と正式な委任契約となっておらず相談中の段階ですので・・・ごにょごにょ・・・。」  Aさんはてっきり委任していると思っていましたが、そうではなかったのです。

 ここでようやく、β先生を見限りました。さてなぜこのような悪循環になってしまったのでしょうか?

① β先生は企業法務中心で交通事故に不案内の事務所・弁護士であった。

 当然ながら「何級となるのか?」後遺障害の予断がまったくできません。醜条痕や目や耳の立証など経験がありません。したがって等級が取れてからではないと何をしていいかわからない、つまり着手できないのです。

② 着手金の請求にしどろもどろ・・

 おそらく法外な着手金をC社に請求したところ厳しい回答をされたのかもしれません。等級が定まり、訴額のシミュレーションができないので弁護士費用特約の請求に躊躇している様子が伝わってきます。しっかり弁護士費用が請求できない事務所=保険会社から信頼されていない事務所です。

③ 治療費の打切り前に必須の検査をすべきところ、

 目や耳の後遺障害など未経験なのでしょう。「ゴールドマン視野計の検査を」、「オージオメーター検査を」などのアドバイスができません。だから先に進みません。

④ 相手保険会社の打ち切り攻勢に、

 ①~②の結果、もたもたして正式に委任契約がなされていません。したがってβ先生は間に入って保険会社との交渉ができません。

 結果としてAさんの解決は迷走状態になってしまいました。やはり受傷直後からしっかり被害者に寄り添い、保険会社との交渉、病院との折衝、後遺障害の立証と申請、これらができない弁護士先生は頼れる存在ではないのです。さらに交通事故外傷、自動車保険に関する知識がなければかえって悪い方向へ流れてしまいます。  もっとも問題なのは、この事務所は「交通事故解決に自信」「後遺障害はお任せ下さい」とホームページで謳っていることです。

 代理人選び・・・これが被害者にとって解決の第一歩です。くれぐれも慎重にお願いします。

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 ありがたいことに弁護士、行政書士さんからもメールを頂くことがあります。内容は後遺障害を中心に事故の相談です。ご自身の事務所にいらした交通事故被害者さんに対し良いアドバイスをしたい・・・しかしわからない事が・・・ そのような時に同業者である私のHPにアクセスし、質問してくる先生が増えています。いい加減な回答やごまかしをせず、つまらないプライドなどを捨てて同業者に質問をする、これは勇気のいる事です。きっと依頼者想いの先生なのでしょう。

 このような問い合わせにも対応しています。なぜならいまだに「後遺障害等級が取れてからまた来て下さい」と対応する弁護士事務所ばかりなのです。つまり等級審査や資料収集など立証は敵であるはずの相手保険会社に任せ、面倒な作業や専門的な調査は避けて、赤本の計算と交渉のみやります、という姿勢です。確かに交通事故だけではなく、刑事事件、離婚、企業法務、クレサラ・・・多くの業務を受任していれば専門性は稀薄、損害が明らかになった時点から(≒簡単な状態で)受任したいところです。このような事務所に被害者は戻りません。また何もできないのに中途半端に受任されても困ります。最近もある被害者さんが「後遺障害は任せて下さい!受傷直後からお任せください!」とHPで謳っている事務所に行ったところ「等級が取れてから・・」と対応されてがっかりしたとのことです。看板もHPも当てにはならないものです。

 私の場合、連携している弁護士事務所が首都圏各県に存在します。その先生方と後遺障害立証について共同戦線をとっています。交通事故の解決に弁護士は欠かせません。しかし後遺障害に精通している事務所は本当に僅かです。弁護士先生と言えど、専門知識はもちろん、医療情報&ネットワークを持たねば後遺障害の立証は困難なのです。損害の立証ができなければ裁判をやっても予定調和の和解、つまり事実上の負け戦となります。  損害賠償と損害立証は切っても切れない関係です。だからこそ私は損害立証のみに全力を注ぎ、賠償交渉は優秀な弁護士につなぐ=連携体制を築いているのです。

← 研修の講師も随時、引き受けています。

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 私のHPにも電話やメールの問い合わせがぽつぽつあります。多くはアドバイスのみで相談は終了しますが、重篤なケガの方は相談会でお会いすることが多いようです。

 最近の傾向として、既に弁護士事務所や行政書士事務所に相談または契約していながら、相談会にいらっしゃる被害者さんが増えたことでしょうか。交通事故で相談先を探す場合、まず知人の紹介、保険会社の紹介など、つてを頼る方が多いと思います。また最近ではネットでホームページを検索、色々と吟味しているようです。    多くのホームページでは後遺障害に強い専門家を謳っていますが、実情は惨憺たるものです。間違った回答をしてしまう先生が実に多い。被害者さんは自分のことなので日夜ネットや書籍で勉強しています。その知識は自称専門家の先生を上回ってしまうことがあります。そして間違った方策を示せば、自然と依頼者は去っていくものです。最近も時効の起算日を間違える先生、自賠責と任意の区別も曖昧な自動車保険に不案内な先生、MRIとXPの違いも曖昧な医療知識に乏しい先生・・・これはつまり交通事故について素人ということです。しかしその先生方を責めても仕方ないと思います。たとえ弁護士の先生と言えども万能ではありません。それぞれ得意分野、未知の分野があります。弁護士には刑事事件、企業法務、過払い金返還請求、離婚、相続、たくさんの業務分野があるのです。すべてに精通することは不可能と思います。  例えばお医者さんですが、それぞれ外科、内科、歯科と専門が分かれています。弁護士も専門分野をはっきり分けて表示してくれないものでしょうか。もしくは自身にとって専門外の依頼者が相談にきたら、専門の先生に紹介するネットワークをもつことが望まれます。

 つまり依頼者第一主義が実現されていればよいと思います。私も交通事故以外の行政書士業務の依頼はほぼ全件、私より詳しい他の先生へ紹介しています。

 すでに他の先生に依頼中の被害者さんをこちらに切り替えさせることなど、極力したくはありません。しかしそのまま任せてはいけない、捨て置けない被害者さんも多いのです。

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 数日遅れの日誌です。本日は山梨の塩山へ。朝からぶどう狩りの乗客に囲まれた列車に乗り込みました。

 山もブドウ畑も朝日に輝き、風が清々しくそよぎます。甲府への出張相談会はまだ残雪残る2月からでした。そして40°を超える灼熱の病院同行を経て秋を迎えました。

 地方出張ですとどこの病院でも「わざわざ東京から?」と少々驚かれましたが、交通が発達し、インターネットも普及した今、それほどの距離感はありません。そして被害者さん達の反応も一様に歓迎ムードです。(今日の被害者さんから夏の桃に続き、巨峰を頂きました。ありがとうございます。)  このように遠方でも必要とされて出向きますから、足取りも軽くなります。

 しかし一方で悲しい情報も耳に入ります。関西方面でも仲間の行政書士、弁護士が出張相談会を開催していますが、地元の弁護士から相談会のチラシ配布等でクレームが入っているそうです。チラシの言葉に不適切な表現が含まれているとのことです。例えば「交通事故専門弁護士」はダメだそうです。確かにその先生は90%以上交通事故しか扱っていないはずですが100%でない限り、誇大広告になるのでしょうか。さらに「○○専門弁護士」との曖昧な表現も好ましくないようです。もちろんコンプライアンス遵守の姿勢から、ご指摘については謙虚に受け止め修正を行っています。

 しかしどう思います?このような言葉一つに目くじらを立てている本当の理由?それは他にあるように感じます。やはり「俺の縄張りを荒らすな!」との感情が見え隠れします。どの業界でもそうですが、地方の弁護士会は特に保守的で、「この地域は俺の島だ」、さらに「弁護士たるもの依頼者から委任を受けてから動くもの、チラシを撒いて集客するなど”はしたない”!」と考えている先生も多いそうです。ちょっと東京では考えられないアナクロ感覚です。今の若手弁護士はそう言われても戸惑うばかりです。

 私は士業、法律業界の旧弊を批判しているのではありません。実働家として被害者と接している立場から常に現場を感じています。地方の相談者さんがチラシを見て相談会に参加した感想を挙げてみます。

・ どこに相談していいか困っていたところにチラシを見て、本当に助かった!

・ 弁護士に相談しようと思っていたが、敷居が高そうで・・、でも無料相談会なら!

・ 地元の弁護士に相談したが、交通事故はあまり経験がないようで・・・

・ わざわざ東京から病院同行までしてくれて本当に心強い!

・ 相談会に参加するまで、このまま保険会社と少ない金額で示談するもの思っていた。

・ インターネットはやらないので、今まで交通事故の情報を目にすることがなかった。

 このように、被害者さんたちは「私たちを待っていた」のです。

 高齢者であったり、情報が少なく様々な事情で積極的に動けない被害者さんも大勢いるのです。潜在的に救済が必要な被害者の為に、法律家からの情報発信が必要なのはわかりきっています。あくまで事務所にどっかり座って”依頼者”を待っているのが法律家として譲れない姿勢でしょうか。困っている人たちにこちらからアプローチし、多くの被害者に手を差し伸べる事が”はしたない”ことでしょうか。お高く構えて、被害者さんを放置していること自体、法律家の怠慢と思えてきます。

 実際に被害者さんたちに接していれば答えは明らかです。

 ← 病院裏の畑、たわわに実るブドウ

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 来月、東京と大阪で「第3回 法律家のための交通事故実務講座」が開催されます。主に弁護士を対象とした研修ですが、回を重ねるごとに内容もグレードアップ、最新事例も盛り込み、最新・最強の研修会と思います。

 さて、最近の交通事故業界の動向は・・・弁護士、行政書士他のホームページを色々と検索してみました。相変わらず専門家の大洪水、どこも集客に血眼と言ったところでしょうか。全体の傾向として「何でも屋事務所」<「交通事故専門事務所」とすべく、従来のHPとは別に交通事故専門ページを作っている事務所が多いようです。そして同じHP製作会社を使っているのでしょうか、フレームどころか記載内容まで一緒のところも多いようです。これでは専門家が泣きますが、その中でより注目したのは、弁護士と行政書士を比較した表です。よくできていますので多くの事務所がまったく同じものを掲載しています。  

  弁護士 行政書士

書類作成

△(保険会社に対する請求書を作成。なお裁判所に提出する書類の作成は不可)

示談交渉

×

調停

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 先週からの疲労が蓄積しています。上手に休息を取ることも仕事のうちですが、さすがに夏場は堪えます。

 今朝は水風呂にドボン!滝での水行のように真水のシャワーを浴びて気合を入れました。しかし早くも午後に力尽きて休息を取りました。体調を壊さないように乗り切りたいと思います。

 さて、いよいよ夏の弁護士研修会が近づきました。

      

○第3回 法律家のための交通事故実務講座 東京会場 続きを読む »

 担当者:「秋葉先生ですか、○○さんの件で担当となりました△△損保の◆◆です。」

 担当者の変更で、事務所に電話が入りました。担当している被害者の相手の保険会社です。被害者は高齢者で書類全般にお手伝いが必要な方です。私が受任し、フォローをしたことにより、相手の担当者も大助かりのようです。現在、後遺障害の審査中で結果を待っています。電話の内容に戻ります。

担当者:「等級の認定はまだですか?」

秋葉:「はい、今月中には結果がでると予想します」

担当者:「その後は秋葉先生が交渉の窓口になっていただけるのですか?」

秋葉:「滅相もない、私は行政書士なので代理交渉はできませんよ」

担当者:「では、賠償額の計算をして○○さんに託して進めるのですか?」

秋葉:「いえ、これも法解釈に問題のある仕事なので私はやりません」

担当者:「???、そうですか・・・。では認定されたら連絡をお願いします」

秋葉:「はい連絡します。その節はお世話になります」

 さて、この会話から行政書士の交通事故業務の実態が浮かび上がります。つまり多くの損保の担当者は「行政書士は実態上、賠償交渉に介入している」事を把握しています。当然ながら弁護士法72条違反です。しかし保険会社は行政書士の介入に何故か歓迎ムードです。なぜなら良くわかっていない被害者との交渉でこじれるより、代理人の方が交渉自体が楽です。そして行政書士が裁判基準の満額から折れないような強交渉でもしない限り、行政書士先生の顔を立てつつ、なるべく安い金額でまとめたいと思います。つまり弁護士を入れられるよりは、はるかにましなのです。行政書士は裁判もできないし、紛争センターへも同席できないし・・・そのような中途半端な存在との交渉は安上がりでいい?のでしょう。もし行政書士が強交渉で折れない場合、「先生、代理交渉は非弁行為ですよ」とさえ言えば、行政書士は黙ります。 それともう一つ、「書面交渉なら72条違反とならない」ことを行政書士側が主張することを保険会社もよく知っています。ただし、被害者の陰に回って書面を作り、裁判基準を請求しても、この担当者はおそらくこう答えるでしょう。

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 本日は支部の行政書士有志の研修会です。今年から新人書士の方が4名新加入し、私もようやく新人を脱したような気分です。しかし後輩の皆さんに業務を教えられるほど、行政書士の業務の経験がありません。交通事故業務一筋でやってきたので、会社設立業務は、ほぼ素人です。新人の先生方と一緒に電子定款の作成について実務を勉強しました。

 行政書士が申請代理もしくは作成できる文章は2万種と言われています。大変すそ野の広い士業と言えます。そのなかで交通事故業務は比較的新しいジャンルです。しかし代理権のない行政書士にはできる業務に制限があります。メインとなる代理交渉は弁護士の仕事です。行政書士はある程度、代書行為ができるにすぎません。したがって、その業務範囲について法的解釈が分かれます。

 一般的に自賠責保険の代理請求は単なる保険請求手続きの代行で、「事実証明」と「意思表示」に分類される行為であり、「代理」ではないという法的解釈となります。しかし相手もしくは相手保険会社と賠償交渉のやり取りとなれば、これは「代理」交渉となりますので、代理権をもつ弁護士の業務範囲となります。学術的にはそうなりますが、なかなか線引きのあいまいなところもあり、いくつかの弁護士会では、「保険請求も賠償交渉の一環である」と解釈しています。長じて「交通事故の相談」、「後遺障害の申請」と銘打つだけで弁護士法72条違反と主張してきます。これはかなりヒステリックな解釈で、一般的に交渉とならなければ事実証明に留まるはずです。

 しかし、一部の弁護士は半世紀も前の判例(自賠責の代理請求は法律事務で非弁行為に当たる)を持ち出して来たり、これまた行政書士も半世紀前の自治省(現総務省)回答(こっちは遵法)を持ち出してきたり・・不毛な応酬が目につきます。法律家を名乗るのであれば学術的に法解釈すべきで、現況とかけ離れた半世紀前の規範に拘泥せず、時代の変化・要請に応じた自らの考察をしてほしいと思います。

 もちろん、そのようなことは弁護士会、行政書士会の双方はわかりきっています。双方の利害に関わる問題なので慎重、積極的に線引きをする気はないように思います。それは特に悪質な個人を取り締まるだけで、「自賠責請求業務は非弁である、もしくは遵法である」を双方、全体(会)に対して申し入れをしないことから伺えます。所詮、この問題は業際争いなのかもしれません。

 解釈上の問題がある以上、行政書士会でも積極的に交通事故業務を推進している支部、距離を置いている支部と分かれています。私はそのどちらに与するものでもありませんが、実務上の線引きは望まれます。あいまいなままでは被害者が迷ってしまいます。

 常に多くの交通事故被害者に接している私としては、行政書士でありながら、他の行政書士の交通事故業務には眉をひそめています。弁護士の分野までこそこそ介入している赤本書士が実に多いのです。毎度主張するように、それは被害者の利益に反すると思います。なぜなら仮に優秀であっても法的制限のある行政書士と、有能な弁護士の仕事を比べれば、後者の方が被害者の利益になるのは明白です。となると行政書士は事実証明、交通事故でいえば損害の調査、後遺障害の立証にその能力のすべてを注ぐべきと思います。

 残念ながら、これはかなり専門性の高い分野、行政書士の資格を取っただけの人には相当ハードルが高いと言えます。そもそも交通事故に関する知識は、行政書士試験にまったく関係ありません。「私は行政書士だから専門家です」という物言いは噴飯ものなのです。

 幸い私は学校を卒業してから20数年、交通事故業務一筋です。さらに弁護士と連携、一緒に仕事をしている私には非弁行為の問題は起きません。それでも、交通事故業務をする行政書士として、稀に疑いの目で見られることがあります。実にうっとおしい問題なのです。  

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 本日は某弁護士事務所にて打ち合わせ。

 交通事故専門事務所として大御所の先生、最近、他事務所を解除してくる被害者の多さに辟易しているそうです。その事務所とは、クレサラ業務(過払い金利息返還請求)で急成長した余勢をかって、交通事故に乗り出してきたカタカナ大手法人事務所です。私はそれら弁護士事務所のアグレッシブな姿勢と旧弊を破壊する若い力に共感をしています。しかし肝心の被害者対応については、実態を聞くと暗澹たる気分になります。

 大御所の先生によると・・・そもそも裁判経験が少なく、一度も判決を取ったことがない弁護士が、後遺障害が重度な事案を受任し、保険会社と妥協的な示談を進めたり、裁判となってもしっかり戦ってくれず、敗北に等しい和解にのってしまうそうです。重度の障害を持った被害者は、その交渉、裁判にその人の一生がかかっているのです。クレサラ方式で事務的に保険会社と示談されるわけにはいかないのです。また最初から戦う気のない和解前提の裁判など到底容認できるものではありません。  そのような被害者が既に契約している弁護士を見限って相談にやってくる件数がうなぎ上りだそうです。多くはその弁護士に不本意な進行をされ、ぐちゃぐちゃになっているそうです。これを先生は「被害者の二次被害」とまで断罪しています。

 やはり弁護士も私たちも人生を賭けた戦いを引き受ける覚悟、そしてなにより実力が必要と思います。安易にクレサラ方式で処理できるほど交通事故は甘くありません。なぜならいつも言うように東京海上や損保ジャパンは武富士やアコムではないのです。年間数万件の交通事故処理をしているプロ中のプロなのです。弁護士も相当の経験、実力がなければ太刀打ちできません。クレサラ業務は専用ソフトに入力すれば計算されて、後はサラ金に送りつけるだけです。それらの事務は事務所の補助者がやるので、弁護士はいるだけでいいのです。このような濡れ手に粟の業務ばかりしてきた弁護士になんの力があるのでしょうか?委任解除されても仕方ないと思います。そのくせ商才ばかり先立ち、弁護士費用特約で、不合理もしくは法外な費用を保険会社に請求し、保険会社から猛烈に嫌われています。その法人事務所を懲戒請求すると息巻く保険会社もあります。

 大手法人は莫大な資金でテレビ、ラジオ、ネットで派手な宣伝を展開し、出版やHPで専門家を謳っています。多くの被害者はまずそれに目を引かれてしまいます。マーケティングの観点でいえば、「多くの方は交通事故など初めてで、弁護士の比較ができない以上、宣伝で引っ張り込んでしまえば勝ち」となります。しかし交通事故はスマートホンを各社比較して買うのとは別次元の問題のはずです。被害者もその真贋を見抜く目を持たねばなりません。    もし弁護士事務所に相談する際、次の質問を用意して下さい。

 「先生はこのケガでの裁判を経験したことがありますか?」

 「先生は交通事故賠償で判決を取ったことがありますか?」

 これに対し納得のいく回答ができる弁護士は極めて少ないことを覚悟して下さい。これは専門家と名乗っている行政書士にも言えます。それだけ日本の交通事故業界は保険会社による示談交渉が80%を超え、超保険会社主導社会なのです。

 最後に知人の保険会社担当者の本音を。

 「カタカナ弁護士法人が被害者につくとある意味ホッとします。この交渉は安く上がりそうなので(笑)」

 すげぇー悔しいです。私自身はもちろん、連携する弁護士先生はこのように思われないよう、もっともっと実力をつけなければならないのです。

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 私の仕事は等級認定で一区切り、その後の賠償交渉は弁護士に引き継いで進めていきます。その賠償交渉も長びくことがあります。紛争センター等の斡旋機関に持ち込めば数か月で済みますが、裁判に発展すれば1年はかかります。その間、交渉が順調であれば見守るだけになりますが、追加の医証が必要となれば再び私も走り回ることになります。そして今月、数件の難交渉案件が解決を迎えました。苦しい戦いを共に戦ってきた被害者さんもようやく安堵し、弁護士も私も晴れ晴れしい気持ちになります。

 毎回、それら解決事案を検証します。どの案件にも共通するのは、交通事故の解決は早いうちに手を打つこと、一貫性をもつことです。つまり受傷後初期から解決までの全体的な戦略を立てることです。行き当たりばったりでは、実利ある解決は遠のくばかりです。難交渉となったものの多くは、最初のつまずきさえなければ、このような長く苦しい戦いにならずに済んだのでは?と思います。その悪い例として3つのパターンがあります。

・相手保険会社に任せっきり ・中途半端な代理人に任せたおかげで迷走した ・そしてなにより被害者自身が冷静に対処できなかった

 相手の保険会社は急場の治療費や休業損害を補てんしてくれるありがたい存在です。しかし自らの権利を守るのはあくまで自分自身です。保険会社には冷静な対応が必要です。そして自分に代わって動いてくれる代理人、多くは法律職者と思いますが、すべてが専門家ではありません。どの弁護士、行政書士も商売上、専門家を謳っていますが、本当に力があるのは、ほんの一握りです。被害者は依頼する相手をしっかり見極めなければなりません。

 良い解決事例のほとんどが、交通事故専門の優秀な弁護士の圧倒的な力、もしくは手前味噌ですが、私と連携した弁護士の連携・共同体制の好取組の成果です。  債務から企業法務やら何でも屋の弁護士事務所は専門性に疑問があります。後遺障害の知識のない弁護士では相手保険会社に負けてしまいます。また代理交渉のできない行政書士に任せても、尻切れトンボのように中途半端な状態に置かれます。後遺障害の立証と後の賠償交渉は一体の戦略で臨むべきです。それは連携先弁護士と気脈を通じて立証作業を進めることによって成し得ます。

 私たちメディカルコーディネーターは全国およそ20地域の弁護士事務所と連携体制を敷いています。この交通事故解決チームで続々と成果を上げています。

 来週は沖縄の相談会にお手伝いに行きます!

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 一年は1月から始まりますが、新入学、新学期など4月スタートの刷り込みでしょうか、春から一年が始まる感覚も捨てがたいところがあります。  日々の業務に追われて新しいアイデアを練る、新機軸を打ち出すことができないジレンマの毎日ですが、病院へ行き先生方とお会いし、相談会害で相談者さんたちと向き合うことが一番の基本業務であることは間違いありません。しかし如何せん体が足りない!!

 新年度からは被害者救済の志を持ったメディカルコーディネーターを発掘、育成することも急務です。そしてなんと言っても弁護士先生の力がまだまだ必要です。弁護士の代理交渉を前進させて被害者救済事業と発展させねば、あまねく被害者を救うことができません。この業界に参入している者がそれぞれの都合、スタンスでバラバラに動いていては、いつまでたっても保険会社主導の交通事故業界は変わりません。それだけ保険会社の浸透は深く強固です。

 交通事故賠償における保険会社の功罪の2面性、良い面は加害者対被害者の紛争化の拡大を防ぎ、一定の社会秩序をもたらしていることです。悪い面は裁判判例の賠償基準に比べ、著しく低額の支払い基準がまかり通っていることです。大多数の小損害事故に対して、穏便な解決が図れていることは重要な社会的寄与と思います。反面、後遺障害を伴う深刻な被害者の多くは半分程度の賠償金額で泣き寝入りの状態です。これに対し行政指導はなく、法律業界からの苦言も効果がありません。それは保険会社が一民間企業で営利会社であるからです。この構造はそう変わものではありません。資本主義社会において、保険会社だけに被害者救済の公共性を強く求めることに限界があります。だからこそ被害者側に立つ業者も、草の根からコツコツ努力を積み重ねなければなりません。

 目の前の一被害者を救うことも、交通事故業界全体の大きな視点に立って考え行動することも、結局は目標が一緒です。それをどのようにバランスの良い両輪システムとするか?これが新年度の課題と思っております。話が大上段かつ抽象的で短い文面では説明しきれませんが、これを新年度の抱負としたいと思います。

 まずは・・・本日、健康診断に行ってきます。健康第一!

 都内のさくらは散り始めています

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 私は弁護士事務所の受任率に注目しています。とりわけ後遺障害案件の受任率を注視します。

 交通事故で大きな収益を上げている事務所は後遺障害案件の受任率が高い。このような事務所は事故相談の場面でも被害者さんが即断、契約します。つまり「等級が取れてからまた来て」などとせず、しっかり初期対応ができる上、後遺障害等級を獲得する実力が評価されたからです。

 実力のある事務所は物損のみの事故、加害者側の依頼は極力引き受けません。やはり後遺障害案件が中心です。重篤な被害者の救済を第一に考えていることもありますが、後遺障害を伴う被害者は賠償金額が大きく、弁護士の収益も大きいからです。弁護士にかかる費用を考慮すれば、軽い損害の事故は保険会社に任せるべきで、代理人を用いるべき仕事ではないと言えます。

  交通事故に特化し、多くの被害者を救い、結果として大きな収益を上げるには、後遺障害の獲得にかかっていると思います。交通事故の支払保険金額の85%が後遺障害の損害額なのです。交通事故に真剣に取り組むのであれば、答えは明快です。「後遺障害等級獲得に強い」事務所になることです。そのためにも「受傷直後から受任」しければなりません。一人で保険会社と対峙する被害者は正しい誘導を失い、等級を取りそびれることが多くなるからです。

 後遺障害が見込まれる被害者であれば、病院同行、医師面談、検査誘致が重要な作業となります。この場面こそメディカルコーディネーター(MC)の仕事が必要とされます。弁護士事務所内、もしくは外部でMCが活躍すれば、飛躍的に後遺障害案件の受任率は伸びます。これは昨年の連携先事務所の数字で如実に表れています。

 「すべて着手金無料」、「画一的な報酬設定」では後遺障害を獲れる事務所にはなりません。また学習を積んだ被害者にも見透かされます。

 過払い利息金返還請求、いわゆるクレサラ業務で大きな収益を上げた弁護士事務所は、次の分野として交通事故に注目しています。しかしクレサラ方式で参入できるほど、交通事故は甘くありません。合理性で臨んでも長続きしません。後遺障害獲得能力を磨かないため、いつまでたっても軽傷ばかり受任し続け、宣伝費ばかりが増大していきます。  そして保険会社はとても手強い相手です。東京海上や損保ジャパンは武富士やアコムではないのです。決して潰れませんし、何があっても保険会社はしっかり利益を得ていきます。対して重篤な案件が少ないため、めったに訴訟をしない弁護士は交渉能力が伸びません。実力がないから重傷被害者は来なくなる悪循環。結果として撤退は目に見えています。    

 交通事故業務は被害者救済事業であると認識していただければ、おのずと道は定まるはずです。私たちも本気で交通事故に取り組む事務所、志のある弁護士との連携を求めています。私たちMCは初期対応と後遺障害認定、この分野で汗をかく準備ができています。そのシステムが長じれば「被害者側の交通事故サービスセンター」が形成されるはずです。サービスセンターとは保険会社の事故処理部門の呼称です。この加害者側のセンターばかりではなく、潜在的に被害者側にもセンターが求められています。受傷直後から被害者を解決まで担当する体制・・これを弁護士が担わなければ、誰が担うのでしょうか?

 日本全国の弁護士事務所に、とりわけ交通事故に取り組む弁護士先生にこのシリーズの主張を強く訴えていきたいと思います。そのために今夏を目標に『交通事故・初期対応マニュアル』の執筆を予定しています。まずは被害者救済業務の技術、ノウハウを全国的に披露しなければなりません。

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 前日よりつづきます。    弁護士事務所にとって「交通事故被害者の初期対応」を困難にしているもの・・・

 それはズバり報酬体系です。

 いくつかの弁護士事務所のHPをみてみました。それぞれの細かな違い、料金の多寡はスルーしますが、おおまかに二つのタイプに分かれることに気づきました。

1、着手金なし+成功報酬10%+20万円 

 これは大手事務所に多いパターンです。着手金無料をうたって集客力強化を図っていますが、最後に20万が加算されるので、正確に言えば「着手金後払い」と思います。この構図は某大手法人事務所が業界に先駆けて打ち出した「着手金無料」攻勢に他事務所が引きづられて、どこの事務所も「着手金あり」ができなくなってしまった状態です。また、依頼者側に弁護士費用特約がついていれば、別体系の報酬規程になります。多くは旧日弁連の報酬基準に準じています。このダブルスタンダードは今回の着目点ではありません。指摘したいのは受任時期です。    この報酬基準はどの段階から依頼しても同じ料金となります。例えば、後遺障害の被害者請求から弁護士に依頼し、その後の賠償交渉まですべて面倒を見てほしい被害者も、既に後遺障害等級を相手保険会社の事前認定にて、認定されてから代理交渉を依頼する被害者も同じ料金となります。前者と後者では作業量も違ってきますし、等級認定の成否も大きく弁護士の力に関わってくるはず・・・なのにです。    受傷直後に相談に来た被害者、賠償交渉ができる状態まで等級などが整っている相談者、どちらも同じ料金なら、「等級がとれてから来てくださいね」となるのが人情です。同じ報酬なら仕事量が少ない方がいいに決まっています。まして着手金が無料ですので、等級が認定されるかどうかわからない受傷直後の被害者を受任するのはリスキーだと考えます。    多くの事務所がこの「着手金無料」+「画一的な報酬体系」のおかげで、「事故直後から受任します」とアピールできません。頼りない印象を持った相談者は戻ってはきません。当然、受任率も低迷します。

2、等級認定前、等級認定後で違う報酬体系をもつ事務所

 この事務所は仮に1の「着手金なし+10%+20万」を掲げつつも、受任時期を等級認定「前」、「後」と分けて報酬設定をしています。つまり等級認定までの作業に対する費用は当然に発生するものと考えている事務所です。等級認定の手間、難しさを理解していますので、この作業を別料金としてオプションメニューにしている事務所さえあります。これらの事務所は自信を持って、「受傷直後から相談に来てください!」と呼びかけています。この言葉の真贋、嘘か真かは事務所の利益面からも裏付けられているのです。

 細かな報酬設定は煩雑に見えますが、被害者にとって初期から助けてもらえ、等級認定にも尽力してくれるなら、十分に納得できるものです。例として、弁護士費用特約がない被害者であっても、等級認定の重要性に理解が及べば、お財布から着手金をさっと出します。それくらい被害者は必死になって助けを求めており、それにかなう事務所を見つけたら迷いはありません。

連携を阻むもの

 1の弁護士事務所に連携を呼びかけるとどうなるか・・・私が「初期対応、特に等級認定は私達、行政書士、メディカルコーディネーター(MC)がやります」とアプローチしても、「秋葉さん、それは助かるけど・・・でも秋葉さんにその分の報酬を払ったら、うちの報酬が減っちゃうよ」と消極的になってしまいます。その分の仕事について、事務所の報酬規程では余分に報酬はいただけない、このような自縄自縛に陥っているのです。さらに事務所内の弁護士、事務員も「初期対応や等級認定は自分たちでできる!」と息巻きます。しかし実態は昨日書いたように「初期対応をやっているつもり」、「被害者請求すらせず」の事務所が多いのです。なぜなら繰り返しますが、同じ報酬なら、なるべく事務が少ない方がいいからです。

 では「報酬規定を改定し、別料金を設定すれば?」これに対しては競争力低下を心配してか、初期対応・等級認定の重要性に気づいていないか、私達MCの仕事の評価が低いのか・・・このような理由から踏み切れません。

 対して2の事務所は渡りに船とばかりに連携が進みます。初期対応をMCに預けることで、受任率は40%を超えます。さらに進化した事務所では事務所内においても初期対応、等級認定に力を入れつつ、等級が見込まれるか否か判別がつかないもの、難事案、とくに病院同行や特殊な検査が必要な案件は私(MC)に任せるなど、案件ごとに使い分けを行っています。

 被害者もこのような事務所に集まってきます。「受傷直後からの受任」に偽りはなく、報酬が高くなろうと、それに見合った仕事をしてくれる上、獲得した等級により最終的に受け取る賠償金も増大するケースが多いのです。結果として顧客の満足度は非常に高いものになります。何故なら初期のフォローから等級認定まで尽力してくれた弁護士の姿・仕事が「見えて」いるからです。多くの事務所は受任したのち、(見えないところで)「保険会社と交渉し、まとまりました」との連絡のみが返ってきます。・・・結果として頼んでよかったのか、わからない状態で解決します。     弁護士費用特約がある被害者であれば、迷わず2の事務所を選びます。そしてMC側=秋葉もこの連携によって報酬がしっかり頂けますので、どんどんこの事務所に案件を紹介します。逆に「秋葉さんに報酬を払ったらうちの報酬が減っちゃうよ~」と心配している事務所に案件は紹介しづらくなります。

 結論。すべて「着手金無料」は現実的ではない。「画一的な報酬体系」では被害者を救いきれない。これを理解し一歩踏み出さねば、連携はもちろん、交通事故に特化した弁護士事務所へ脱皮できないのです。  

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「受傷直後から受け付けます!」

法律事務所が「初期対応」可能であれば、交通事故被害者は安心して治療に専念できます。最近のHPでも初期対応をうたう事務所も散見できるようになりました。私も弁護士事務所との連携の打ち合わせでは、まずこの部分を綿密にお話しさせていただいています。すると弁護士事務所の受け取り方は大きく3つに分かれる傾向があります。

1、初期対応?何をするの?

おなじみの「等級が来てからまた来て下さい」という対応を続けてきた事務所です。すべての損害が明らかになってからではないと積算(損害の計算)し、代理人として相手に請求できないので・・と考えます。確かに弁護士の仕事を代理人による賠償交渉のみ、にとらえればそうなります。しかしいつも主張するように、後遺障害を残すような被害者さんたちは、等級認定が大きな勝負の分かれ目であり、そこにたどり着くまで大変な苦難を味わいます。もしくは苦難がない場合、多くは保険会社の支払基準で保険会社の都合のいいように進められてしまった方です。 この仕事は「被害者の救済事業」です。助けるべき局面、仕事は受傷後からたくさんあるのです。弁護士とはこの大きな視点から一緒に考えていきます。

2、うちは受傷直後から受任しています!

実に頼もしい答えが返ってくる事務所もあります。しかし、実際は・・・ちょっと意地悪ですが、2~3質問してみます。

①「治療費を健康保険に切り替える際、第三者行為による傷害の届け出を行いますが、これも御事務所で対応を?」 → 「はい。電話で『健保組合に聞いて進めてください』とアドバイスをしてます。」

②「労災の請求はどのようにしていますか?」 → 「はい。『労働局に聞いて進めて下さい』とアドバイスしています。」

③「後遺障害診断書の依頼はどのようにしていますか?」 → 「主治医に手紙で『よろしく』と添えています。」

ようするに何もわからないけど対応しているつもりになっています。質問に答えていませんし、実際、被害者のなんの役にも立っていません。ひどいと後遺障害の認定も相手保険会社に診断書を提出(事前認定)し、すべて任せっきり・・・。これでは受任中に被害者が離れていきます。場当たり的なアドバイスで誤魔化してもメッキは剥がれます。しっかり被害者をグリップできるかは、これら初期手続きのフォローにかかっていると思います。

3、初期対応、後遺障害認定こそが課題です

対応しているつもり?の事務所ではなく、どうしたらよいか明確に自己分析ができている事務所です。早くから相談にきた被害者の対応に苦慮している、後遺障害等級の獲得に苦戦している、異議申し立ての受任判断が難しい・・・等々、謙虚に仕事に向き合っている先生です。 こことの連携はすこぶる良好になります。裁判、示談交渉以前の事務を私たちメディカルコーディネーター(MC)に任せ、被害者を煩雑な事務から開放し、保険会社との交渉が生じれば直ちに間に入り、被害者をこの交渉ストレスから切り離します。そしてMCは医師面談や検査同行を通じて間違いのない後遺障害認定に落ち着かせます。最後に弁護士が賠償交渉でばっちり解決します。また異議申立の準備も、裁判での医証集めも、MCが弁護士の指揮下で暗躍します。このようにトータルで被害者救済業務が完成されます。結果として依頼者の満足度は非常に高いものになります。

現在、多くの連携先でこのシステムが主流となっています。ボスとイソ弁2人、事務員3人・・この規模の事務所では外部のMCと連携することによって、良い結果を量産しています。また大規模法人事務所は、事務所内の事務員・パラリーガルをMCとして養成、自事務所で完結する流れを作り上げています。このMCを養成するのも私の仕事と自負しています。

交通事故業務への向き合い方は、弁護士事務所によってそれぞれ違います。残念ながら多くは1か2のタイプです。私は「交通事故業務を弁護士に取り戻す」には3の「連携体制」+「受傷直後からの完全対応」の確立にかかっていると思います。1の考え方では、被害者は相手保険会社に取り込まれてしまいます。2の対応では看板に偽りありです。

では、私が利害を説いた結果、簡単に3の対応になるのか?ここでも問題が立ちふさがります。

つづく

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 飛び飛びで投稿しております、「被害者救済業務を分析」再開します

前回まで→ 被害者救済業務 を分析 ⑥

 「交通事故業務を弁護士の手に取り戻す」・・・そのためにはどうするべきか、今日から私の考えを示していきます。

 前回まで交通事故被害者を取り巻くを解説しました。保険会社主導で80%が解決されている環境下で何が必要か?私はそれを交通事故の初期対応に求めるべきと考えます。

 最初の表に戻ります。

        <完全解決までの基本的な流れと役割>

 

事故

発生

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① 法的に保険会社の示談代行を可とした。

② 紛争センターのような仲裁機関を設置した。

③ 保険会社が顧問弁護士、協力弁護士を受け入れる。

 示談代行付き保険は3つの制度を引き換えとばかりに誕生しました。以降、保険会社による示談・支払いの一貫した解決が可能になり、それが当たり前になっていきました。一方、弁護士は保険会社の交渉でも解決に至らない案件を受け持つようになりました。

 時は流れ平成に入り、私は旧安田火災(現 損保ジャパン)に入社しました。一年目にサービスセンターに短期配属され、山のような事故時払いデータや統計を目にしました。そこで警察に届出された交通事故に対し、保険会社による示談解決は84%との数字をみました。このほとんどが保険会社 対 被害者の交渉で解決しています。このうち弁護士が介入する代理交渉はどのくらいの数字でしょうか?これについてはデータがありませんでしたが、多くは問題のある被害者に対し、保険会社側が雇う形が多かった印象です。

 被害者側に立つ弁護士が少ないのでは?その頃から長らく疑問に思っていました。

 ここ2~3年急激に被害者側にアプローチする弁護士が増えてきましたが、未だ弁護士に委任して解決を図ることは一般的ではないと思います。やはり圧倒的に「保険会社vs被害者」の直接交渉なのです。理由を考えました。

保険会社主導の解決

 あまりにも保険会社のシステムが優秀で、被害者は保険会社のペースで解決に誘導されます。人身担当者がついて病院への一括払い(病院に治療費を直接、精算してくれる)や、物損担当者がついて、さらに物損アジャスターが活躍(被害車両を見るため、足を運び検証)し、組織的に解決を図ります。特に任意保険の加入者同士の事故で、双方に車両保険や人身傷害特約が付いていれば、両社の保険会社によりスムーズに解決してしまいます。もちろんその方が円満でよい結果も多いと思います。しかし後遺障害を残すような事故の場合、保険会社の基準=少ない賠償額で円満解決ではあまりに被害者がかわいそうです。

保険会社寄り?の弁護士

 交通事故を扱う弁護士の多くは顧問、・協力弁護士出身です。そして保険会社との関係が切れても、世話になった保険会社と争う案件は受任しない、徹底的には争わない、このようなケースを未だに目にします。

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部位別解説 後遺障害等級認定実績(初回申請) 後遺障害等級認定実績(異議申立)

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