先日の記事はつまり、「交通事故・行政書士のレゾンデートル(存在意義)が揺らいでいる」状況を解説したものです。いずれ、「別に行政書士が交通事故を扱わなくてもよいのでは?」が世間の声となるかもしれません。
それでも、未来を失ったわけではありません。私が推進しているのはあくまで「被害者救済業」、単なる「行政書士業」では括れません。根本に帰って、将来を展望、決意を表明します。
平素から訴えている通り、被害者側の損害立証が手薄なのです。特に後遺症です。これは専門性を要する業務で、それ程簡単にできるものでなく、また、簡単に扱われても困ります。
前提ですが、弁護士にとって交通事故は数十ある業務の一つでしかありません。交通事故だけに専門特化した事務所などほんのわずか、全国でも数えるほどです。法律の専門家であっても、交通事故に精通している先生はごく一部なのです。”弁護士=交通事故のプロ”という構図は約束されてはいません。このような中、被害者にとって、本当のプロ=後遺症のエキスパートは潜在的に必要なものと断言します。
保険会社を見ればわかります。保険会社には対人・対物事故の交渉担当者がいて、さらに自動車の査定を行うアジャスター、医療査定を行う医療アジャスターがおります。それだけではありません、顧問医、顧問弁護士、協力弁護士、そして、外注の医療調査会社・・完璧なチームを形成しているのです。
翻って被害者の周りに味方はいるでしょうか?警察も病院もお役所も、裁判所も無料相談の窓口も、それぞれの立場で対処しているに過ぎません。被害者がお金を払って雇った専門家だけが、唯一味方と呼べるはずです。このように、被害者さんは”圧倒的に不利な戦いを強いられている”現実を自覚しなければなりません。
現状の大手事務所によるクレサラ解決では埒の明かない、不慣れな弁護士による、間違った誘導で路頭に迷う被害者さんは大勢いるはずです。事実、毎回のように相談会に参加されています。今後もセカンドオピニオンが増加、大手事務所を見限った被害者さんの相談・依頼が続くでしょう。
また、どれだけ大手事務所が毎月100件の受任を果たそうと、まだまだ後遺障害が見込まれながら立証不足で、もしくは賠償金も保険会社の基準額にて、保険会社と残念な金額で解決をしている被害者さんは水面下で大勢ひしめいています。未だ、被害者の皆さんに声が届ききってはいないのです。これは、多くの損保代理店さんからの情報、地方相談会の反響から確実にそう思います。その意味で、まず、ニーズを喚起している大手事務所のネット攻勢は、広く業界として歓迎すべきことかもしれません。そう、(交通事故被害者の)裾野は大変「広い」のです。
そして、この業務、それ程軽薄ではありません。交通事故の知識は法律に留まらず、保険、医療が分厚い2枚壁として存在します。とりわけ、人体1000種にも及ぶ後遺障害の深遠があり、(交通事故業務は)とっても奥が「深い」のです。簡単に専門家になどなれません。高い専門性を持った業者でなくては、繊細な立証作業が求められる、深刻な被害者さんを救うことはできません。「より専門性を持った事務所へ」、被害者さんの賢明な選択に期待します。
交通事故業界、もはや、「弁護士なら(誰でも)安心」の幻想から、「弁護士は選ばなければならない」現実に移行中です。
その潜在的なニーズに応える為にも、保険会社に対抗できる専門的、かつ強固な後遺症の立証体制を、被害者側に構築しなければなりません。これは、すべての弁護士事務所には期待できないものです。私がこの業界に入って、まず、弁護士との連携を率先して説いて回ったのは、弁護士はこの分野が手薄であり、それを補うべく、自らを技術集団とする構想を最初から持っていたからです。弁護士会に追い込まれて、「付き添い代理交渉⇒書面交渉⇒自賠責保険・代理請求」と変節してきた行政書士とは根本的に違います。
どこまで行っても交通事故を解決させる権能を持つものは弁護士です。しかし、その守備範囲の外を補う役割は用意されているのです。問題はそれが顕在化していないこと、職業として確立していないことです。
弊事務所も組織化の過程にあります。目指すは専門家集団の確立です。例えるなら傭兵集団や軍事顧問でしょうか。
戦国時代、戦国武将の影には雑賀・根来の傭兵集団や甲賀・伊賀の忍者が存在しました。それら技術集団が戦を陰ながら決したと言われています。そのような頼られる存在として認知されなければ、私達の存在価値はありません。この5年間だけでも、10を超える弁護士事務所と連携関係を結び、技術協力を継続してきました。
今年は今まで以上に、単なる行政書士事務所の枠に囚われず、被害者側の医療調査チームとして、存分の働きをお見せしたいと思っています。世の中に本当に必要なものは残るはずです。目指すはデニムのように強くしなやかな生地であり、世に広く定着した「定番」と思っています。
現状をまったく逆境とは思っていません。常に新機軸を打ち出し、質の高い実績を積み重ねるだけです。そして、有意な人材をじっくり育て、輩出させていきたいと思います。
どうか、被害者の皆様はもちろん、業界の皆様も弊事務所に瞠目、そして、長い目で見守っていただければと思います。ご期待は重くも励みになるのです。
以上、暑苦しくなりましたが、今年の覚悟です。(このシリーズ、将来、出版の原稿になるかな)
一年間、よろしくお願いします。