「交通事故は行政書士に」、「後遺障害の専門家」、もうこれらの看板は傾いているかもしれません。

 交通事故分野に独自の努力で手を広げてきた先達は、確固たるものを残せたのでしょうか? 尚も看板を掲げる交通事故・行政書士の将来は?

 5年の回顧では足りませんので、もう少し歴史を辿りましょう。

 交通事故・行政書士は以下、3段階の過程を経て今日に至ります。10年前は賠償交渉を含んだ業務を行ってきました。
  
【第1段階】 付き添い代理交渉

 加害者側保険会社に被害者と同行して、「被害者の付き添いなので代理交渉ではありません」を建前として堂々と賠償交渉を行ってきました。違反ですが、保険会社は「あくまで裁判基準満額をよこせ!」と強交渉しない限り、割りと寛容に交渉に応じていました。行政書士の介入で示談が進めば、それなり解決スピードが上がります。弁護士と違って、安めで示談金もまとまりますし・・。何といっても強硬姿勢の行政書士には「先生、非弁行為ですよ」と言えば、黙りますので、やり易いのです。
  
 これなら弁護士に任せた方が良かったのに・・

  
【第2段階】 書面交渉

 賠償金請求書を作成し、被害者にその「書類=ペーパー」を相手保険会社と往復、交渉させます。もしくは、被害者に賠償金の計算書を持たせて紛争センターに送り出します。紛争センターも当初は第1段階のように付き添いをしていましたが、「行政書士、同席禁止」となってから、もっぱら「ペーパー」を使った、遠隔操作に移行しました。

 「書面を作成しただけなので、賠償交渉ではない」と、「とんち」で弁護士法違反を回避したつもりでした。しかし、詭弁は通らず、弁護士会が「けしからん!」と言えば、縮み上がります。逆に反抗、訴訟に訴えでた行政書士は悉く敗訴、誰がどう考えても「とんち」では切り抜けられません。一休さんの時代ではないのです。
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 交渉ができないのなら最初から弁護士に任せた方が良かった

 
【第3段階】 自賠責保険の代理請求

 「賠償交渉」がいかなる手段でも駄目なら、「保険請求」なら順法であると、多くの赤本書士(書面による賠償交渉を行う)は徐々に「後遺障害の専門家」と看板をすげ替えだしました。

 自賠責保険は賠償保険ですが、審査は一方が行うので片面的、性質に争訟性がないと解釈できます。「ここまでは行政書士でも順法、OK」と、多くの弁護士に理解を得ることができました。一方、あくまで「自賠責保険請求も法律事務の一環である」と解釈する弁護士先生と意見が二分しました。

 それでも弁護士の多くが後遺障害認定業務を忌避してきた歴史があり、ある意味、ここでようやく行政書士は安住の地を得たのです。事実、弁護士を上回る造詣を持つ行政書士が、一定の地位を築いたと言えます。

 しかし、近年、弁護士も積極的に後遺障害に関わるようになっており、自然、業際問題が浮き彫りに。そのような中、会として交渉することなく、個別に訴訟に訴えた行政書士が自爆的敗訴、またしても安住の地は失われそうです。
 
 
【地位固めができなかった理由】

 結局、業界に確固たる地位を築けなかった理由は、

賠償交渉 ⇒ 弁護士と競業関係に立った=業際問題 ⇒ 違法書士 

 につきます。 

 しかし、一方、上手く連携関係を築いていれば、

損害調査 ⇒ 弁護士に引継ぎ=連携業務 ⇒ 後遺障害の専門家

 弁護士と共存共栄、生き残ることができたはずです。

 このような理解を持った行政書士が少なかったことが悔やまれます。

 また、散々賠償交渉をやってきた行政書士は、追い詰められてから後遺障害の専門家に転向したので、説得力に欠けると思います。
 
 
【未来予想】

 さて、交通事故・行政書士の未来予想。これだけ弁護士が交通事故に積極的に宣伝をするようになった現在、被害者はまず、弁護士に相談・依頼をするでしょう。普通に、「ファーストチョイスは弁護士」です。

 事実、これまでそれなりに引き合いがあった行政書士のネット集客も、2年位前から激減しているはずです。これは今後も減少の一途と思います。行政書士を上回る情報量を持った弁護士のHPが出揃った今、行政書士への選択はずっと下へ、これは自明の理です。

 行政書士は、弁護士が面倒になって放り投げた、利益性の低い「ぐちゃぐちゃ案件」や、見通しの低い「異議申立」を拾い集める状態になるかもしれません。異議申立ての成功率は6~7%です。一部の実力ある事務所だけが、なんとか成功率を引き上げるだけで、仕事は薄利化、しかも、弁護士費用特約は10万円までしか払われません。

 そして、何かにつけて平成26年の高裁判決を持ち出され、「自賠責の代理請求は違法ですよ」と後ろ指をさされます。
 
 このような状況下、以下、4分すると予想します。
 
1、頭の黒い先生はなんとしても、交通事故にしがみ付きます。交通事故業務の看板を下ろして地下に潜りますが、いずれ捕まりだすでしょう。食い詰めて、性懲りも無く賠償交渉に手を染め続けるからです。

2、また、弁護士に案件を紹介して紹介料を稼ぐ、新たな違反先生も増えるでしょう(弁護士との取引で紹介料は禁じられています)。実際、何人かの弁護士先生から、「某行政書士からそのような提携のアプローチを受けた」と聞き、愕然としました。

3、多くの先生は以前のように、交通事故を含め、扱い業務をたくさん掲げた、普通の”行政書士事務所”に戻るはずです。思ったより交通事故は儲からなかったと言って・・。

4、確固たる専門性を持ったほんのわずかの事務所が、何らかの変容を経て、生き残るかもしれません。必然、弁護士との連携体制が鍵となります。弁護士から信頼されるクリーンな業務、かつ、技術力が試されます。

    
 明日、ようやく自身の回答、そして、方向性を語ります。

 つづく