昨日は、健保使用と自賠責保険をめぐる病院の対応を分析、被害者・保険会社・病院、それぞれ3者の立場を明らかにした上で、意見展開しました。
交通事故の対立とは、まず、加害者・被害者の二極対立が想起されます。しかし、加害者は不起訴あるいは刑事罰が決まるまでは存在するも、その後、まったく姿が見えなくなります。刑事処分が決まるまでは減刑の依頼で、電話や手紙でお詫びしてきますが、処分が決まれば、ぱったりとなります。刑事処分が決まれば後は民事ですが、その役割は加害者加入の保険会社が担います。そして交通事故は、被害者と保険会社と病院(または諸役所)、3者の思惑が対立する構造に変化します。
この3極構造が、交通事故の解決を複雑にします。そして、被害者はその渦中、冷静さと知恵で切り抜けなければなりません。多くの場合、誰かが軍師となって指南しなければならない場面が多いものです。その担い手である弁護士さんですが、その知見から局面で好判断を指導、解決まで遺漏・禍根なく導いてくれることを期待されます。
しかし、これも毎度のことですが、あえて面倒な3極構造には立ち入らず、「治療が終了してから」、あるいは「後遺障害等級が決まってから」が仕事と割り切っている事務所が多いと思います。つまり、賠償交渉のみが弁護士の仕事と捉えています。それは、間違ってはいませんが、賠償交渉の下準備は事故直後から始まっています。適切な誘導あってこそ、万全の賠償交渉につながるものです。
具体的には、健保・労災の使用判断、相手保険会社への対応、病院窓口への対応・方法、医師との診断に際する注意、各種保険の駆使・・数えたらきりがありません。法律知識より、医療知識、保険知識が重きをなします。そして何より、それらの実務経験です。昨日の記事に上げた問題に対し、病院との折衝を上手く乗り切る必要があります。ここでコケると苦戦必至です。好解決は遠のくばかり、いくら有能な弁護士を雇おうとも、取り返しのつかないことも多く、後の祭りとなります。
交通事故の解決に際し、法律知識は1/3程度を占めるに過ぎないと思っています。法的判断が必要な賠償交渉に入る以前に、諸事務・折衝でたくさんの壁や落とし穴が待っているからです。それらは、交通事故被害者になって、初めて知ることばかりですが・・。
人生で初めての交通事故、その時、3極構造を上手く乗り切れる被害者さんはわずかと思います。願わくは、正しい誘導をしてくる事務所を軍師に迎えてほしいと思います。
(3極構造の代表者?)