中断していた指シリーズ5選完結です。最後はいわゆる突き指のひどい病態、マレット変形です。指先へ垂直に衝撃を受ける「突き指」は正確には「槌指(つちゆび)」と呼びます。野球、バレーボールでボールが指先に当たり受傷することが多数例です。もちろん交通事故外傷でも可能性があります。
【病態】
DIP関節部への外傷が原因でDIP関節の伸展機能が損傷を受けたり、DIP 関節が亜脱臼となったものを言います。屈曲を強制されて生じるもの、軸圧によって生じるものの2種があり、治療法も異なるので注意が必要です。
放置すると関節が固まってしまい、いわゆるスワンネック変形を及ぼします。
【治療】
軽度であれば亜脱臼を整復後、消炎鎮痛処置します。しかし伸筋腱損傷や骨片を伴うもの、特に軸圧損傷で脱臼骨折となった場合はスワンネックにならないよう、手術で整復する必要があります。代表的な手術は以下、石黒法です。
2、骨片の1~2mm遠位にキルシュナー鋼線を刺入します。
これも経皮ピンニングの一種です。
3、末梢骨片を牽引しつつ整復し、2本目のキルシュナー鋼線でDIP関節を固定します。
やはり急性期の伸展位固定を早めに切り上げ、可動域訓練をすることが大事です。
※ 『カラー写真で見る骨折・脱臼・捻挫』(羊土社) 参照
【後遺障害】
労災の基準では、マレット変形となった場合、14級7号「1手の親指以外の手指の遠位指節間関節(DIP)を屈伸することができなくなったもの」となります。曲がったっまま、もしくは伸びたままのDIP関節が硬直した状態です。ちなみに末節骨や中節骨に骨片の残存があった場合、14級6号「1手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの」が認定されることから、変形や転位があっても12級は認めてくれないようです。
手指の機能障害「用廃」と違い、「屈曲・伸展することができない」状態については硬直(±5°)は当然として、何度なのかは不明です。総じて自賠責ではDIP関節の障害に明確な基準が公表されていません(もしくは、DIPは対象外?)。
マレット変形は相談会での相談例はありますが、未だ受任・等級認定のない症例です。この障害はある意味、きちんと整復をしなかった結果です。後遺症を残さないよう、しっかり処置することが第一です。相談会では正しい治療法の提案、転院のアドバイスも必要となります。