興味深い記事があったので、記載したいと思います。因みに待機的手術とは、外科的機器やメスなどを用いて、計画的に患部を切開して治療的処置を行うことを指すようです。要するに緊急手術のような場合を除いた、手術する前に十分検証、説明をした上で行う手術ということですね。
多くの一般的な待機的整形外科手術は保存治療と比較して、全体/サブグループにおいて有効と思われるが、より効果的であることを示す強力で質の高いエビデンスはないという。英国・National Institute for Health Research Bristol Biomedical Research CentreのAshley W. Blom氏らが、レベル1のエビデンスのアンブレラレビューの結果を報告した。著者は、「強力なエビデンスが不足しているにもかかわらず、これらの手技のいくつかは、特定の状況下において国のガイドラインで推奨されている」として、「一般的な待機的整形外科手術と無治療、プラセボ、非手術的治療と比較する研究を優先することが急務である」とまとめている。BMJ誌2021年7月7日号掲載の報告。
10種の手術について、無作為化比較試験のメタ解析のアンブレラレビューを実施
研究グループは、Medline、Embase、Cochrane Libraryおよび参考文献を、2020年9月まで検索し、最も一般的な10種類の待機的整形外科手術のいずれかの臨床効果を無治療、プラセボまたは非手術的治療と比較した無作為化試験のメタ解析(メタ解析がない場合は他の研究デザイン)を特定し、アンブレラレビューを行った。
10種類の整形外科手術とは、
・関節鏡視下前十字靭帯再建術
・関節鏡視下膝半月板修復術 ・関節鏡視下膝半月板部分切除術
・関節鏡視下腱板修復術
・関節鏡視下肩峰下除圧術
・手根管減圧術
・腰椎除圧術 ・腰椎固定術
・人工股関節全置換術
・人工膝関節全置換術 である。
2人の研究者が独立して要約データを抽出し、3人目の研究者が加わりコンセンサスを得た。各メタ解析の方法論的な質はAssessment of Multiple Systematic Reviews instrumentを用いて評価し、Jadad decision algorithmを用いてどのエビデンスが最も優れているかを確認した。また、英国国立医療技術評価機構のエビデンス検索を用いて、各手技の推奨がエビデンスを反映しているかについて確認した。
主要評価項目は、一般的な待機的整形外科手術のエビデンスの質と量、および関連する国の臨床ガイドラインにおける推奨度との比較であった。
手根管減圧術および人工膝関節全置換術のみ、非手術的治療より優れる
無作為化比較試験では、手根管減圧術および人工膝関節全置換術については、非手術的治療に対する優越性が支持された。人工股関節全置換術または半月板修復術については、非手術的治療と比較した無作為化比較試験はなかった。他の6つの手技に関する臨床試験のエビデンスは、非手術的治療と比較して有益性はないことを示した。
ほとんどの一般的な待機的整形外科手術は、決定的な無作為化比較試験が行われていないため、質の高いエビデンスに裏付けられていないことが明らかとなった。
(ケアネット参照)
先程挙げられた10種類の整形外科手術は、交通事故外傷の定番、おなじみのものです。弊所でも、手術を選択するかを検討も、主治医から「手術を受けても劇的な効果は期待できない」と言われている患者さんをよく見てきました。迷っている方には、正直にそこを伝え、よく考えて決断するようアドバイスしています。執刀医の腕にもよるのかもしれませんが、手術を受けてとても良くなったという方はあまり見かけないというのが私の抱いている印象です。
今回特集された手術は「緊急性のないもの」という限定されたものなので、所見が曖昧だったり、このままでは日常生活を送ることさえできないといったレベルではない事案が多いのかもしれません。頚腰椎ヘルニアやTFCC損傷、膝の損傷(半月板や靭帯)、腱板損傷(軽度断裂も含みます)でご相談される方は、熟考することをお勧めします。手術を受ける前にぜひ秋葉事務所へご相談ください。交通事故解決に最適なプランニングを導き出せるかもしれません。