自賠責の後遺障害認定には、相当・併合・加重といった独特のルールがあります。これらの解説は、交通事故を扱う弁護士・行政書士のHPで簡単に調べられますので割愛しますが、実際のケースで設計図が書ける専門家は果たして何人いるでしょうか。
本件は複数の障害が重なった結果、相当と併合のルールが駆使されました。私達は申請前から既に等級を計算しています。ある意味、後遺障害の立証とは最終的な障害等級=目標地点を定め、それに必要な医証を集める作業です。この感覚を身に着けるには経験を重ねるしかありません。重傷の被害者さんが、「とりあえず(何級になるか解らないが)申請してみましょう」・・などと言った、頼りない専門家さんに任せないよう祈っています。
4年間の密着が続きました
併合5級:大腿骨・脛骨骨折 腓骨神経麻痺(50代男性・埼玉県)
【事案】
バイクで走行中、左折自動車の巻き込みで衝突・受傷、左右両脚の骨折となった。とくに左脚は膝上の大腿骨顆上部と脛骨近位端を粉砕骨折しており、癒合も長期化した。プレート固定+人工骨の埋没など、数度の手術を経たが、大腿骨の変形と短縮は当然に残存した。膝の靱帯も損傷、腓骨神経麻痺も併発し、足関節と足指の可動域も用廃状態、醜状痕も広範囲に残った。事務所開設以来、切断肢を除けば下肢の最重傷例となった。
【問題点】
骨癒合を果たせないまま転院を重ね、手術とリハビリの連続から、症状固定まで実に6年2ヶ月を要した。相手保険会社はその間、何度も治療費打ち切りを切り出してきた。秋葉は治療費を健保へ切替え、何度も医療調査に立会い、保険会社調査員の理解を促した。それでも、打ち切り攻勢は続き、連携弁護士が担当者と交渉を重ねてきたが、それも限界と判断し、症状固定とした。
【立証ポイント】
まず、本人、弁護士との3者打合せで、障害等級の設計図を書いた。
この設計図通りの認定に導くため、すっかり馴染みとなった専門医の診断に立会い、綿密な打合せを行った。続いて理学療法士の可動域計測にも立会って計測をフォローした。5病院の診断書・レセプト・検査データ・画像CDを集積し、数十枚の写真を撮り、4Pの申述書を作成、提出書類は電話帳2冊分の厚さに。
結果、機能障害(左膝10級11号、左足関節8級7号、左足指9級15号)で6級相当、変形(左大腿骨12級8号、左脛骨12級8号、※短縮障害13級は変形に内包)で併合11級、加えて醜状痕は12級相当、これら相当・併合のルールから5級(膝下切断肢が5級のため、これ以上の併合上位等級はない)・・ほぼ設計図通りの認定に。
複雑な認定内容ですが、完璧な準備=申請前に設計図が書けなければプロではありません。人生の後半がかかった被害者様に取りこぼしは許されないのです。