自賠責保険の後遺障害申請は、自賠法上、何度もできます。ただし、厳格な認定基準が存在しますので、たいてい、2度目の申請=異議申立(上部で再審査)で勝負は決します。等級の上位変更の為には、初回申請で不足した医証(診断書や画像、検査結果)を補充することが基本です。あるいは、新たな検査結果を追加することが望まれます。

 秋葉事務所では、たいてい初回申請で遺漏なく書類を提出し、望み通りの認定結果を得ています。また、むち打ち14級9号の申請で多いのですが、2回目の申請までで等級を固めています。したがって、3度の申請は珍しい例と言えます。本件では、自賠責での審査を諦めて、自賠責・共済紛争処理機構に上申しました。ここも、自賠責保険と認定基準を同じくするので、初回から検査や書類を完備する私達としては、あまり実効性を感じていません。CRPSという難病、その特殊事例から仕方ありませんでした。

 それにしても、一番軽い後遺障害である14級9号こそ再申請が多いのです。被害者さんも私達も大変です。
 
被害者にこれだけの苦難を課すの?

紛争処理機構14級9号:CRPS 第5足趾末節骨 剥離骨折(40代女性・千葉県)

【事案】

農作物の出荷場で作業中、フォークリフトのリフトが足指に下ろされて受傷、小指の先、末節骨の剥離骨折となった。剥離(はがれた)骨折は通常の骨折より、実は癒合が悪い。

さらに、痛みは軽減するどころか増悪し、ついに半年後、「痛みの外来」、つまり、専門医によるCRPSとしての治療に切り替った。久々に真正CRPSである。
 
参考 👉 CRPSについて 概論と近況
 
【問題点】

ところが、相手損保はCRPS?など奇病・珍病の類は認めない。治療費打ち切り攻勢に。この時点での相談・受任となった。健康保険に切り替えて、相手損保との摩擦を避け、専門医の治療を継続させた。このまま症状が収まればよいが、1年経過をみて後遺障害申請の勝負にでた。

CRPSの認定基準上、皮膚温度の低下、骨委縮、関節拘縮などが認定条件であるるが、足の小指ゆえにサーモグラフィーに左右差がでずらく、末節骨はそもそも委縮しているような骨である。専門医の治療が継続していること、第5足趾ゆえの特殊性を訴えたが・・・温度差の左右差がわずかであること、骨委縮や関節拘縮がないことを理由に初回申請は非該当の回答。

より詳細に神経症状を専用の診断書に記載の上、実態上CRPSに陥っていることを再請求で訴えたが、上部審査での判断はまたしても同じく「基準外」で非該当。いつもの自賠責であれば、「CRPS特有の治療(疼痛コントロール)が10か月も継続され、アロデニア(異常疼痛)が続いていること」から、症状の一貫性と信憑性により14級9号でお茶を濁すはず。担当者の悪意すら感じる結果が続いた。
 
【立証ポイント】

審査員を変える必要がある。確かに基準は絶対かもしれないが、本件の場合、自賠責の判断はあまりにも硬直に過ぎる。粛々と自賠責共済紛争処理機構に上げて結果を待った。

今度は、CRPSの基準に完全に満たないものの、症状が信用されて最低限の14級9号の回答。困窮の程度から、12級13号を得たかったが、基準の壁から訴訟認定も困難と考え、連携弁護士の賠償交渉へ進めた。悔しいが一矢報いたと思う。