毎度のことですが、2度目の14級9号の認定率は低いものです。ただし、0%ではない。
神経症状14級9号の認定を受ける部位は、主に頚部と腰部です。これらの部位に神経症状が生じると、短期間での完治は難しく、以後も再発する傾向です。それは、年齢変性(加齢による脊椎の変形、ヘルニア等が神経に触り易い)が関与するからと医学的に説明できます。つまり、慢性疾患に近い。したがって、自賠責は一度、その部位に認定すると、数年後にもう一度痛めたとしても、審査は厳しく再度の認定を簡単に下しません。
そもそも、過去に14級の障害を受けた部位に、重ねて同じ障害を追っても、加重障害となり、保険金は0円になるのです。
その辺の理屈 👉 保険会社は知っている ② 5年ぶり3回目の出場(じゃなくて申請)
対して賠償的な観点からすると、裁判でも14級9号の逸失利益(障害を負ったことによる将来の損害)の相場は5年限度が多いようです。すると、過去の受傷・認定で決まった逸失利益の年数、又は5年経てば「治った」ことになり、再度の障害認定に矛盾はないはずです。しかし、前述の通り、あたかも「味をしめたな」とでも思うのか、自賠責は厳しく判断します。ここが、自賠法に規定された自賠責保険と、民法の不法行為による損害賠償の違いが生じるところです。
本件被害者さんにも以上の理屈を事前に説明しました。しかし、20年ぶりに襲ってきた痛みや不具合を前に、そう簡単に納得などできません。「なんとか認定にならないでしょうか?」・・・同部位2度目認定へのチャレンジ、困難ながら佐藤は懸命に立証作業を行ったと言えます。
「依頼者は無理難題をおっしゃる」
再登場、クアトロ佐藤(カズレーザーじゃないよ)
14級9号:頚椎捻挫(40代男性・神奈川県)
【事案】
自動車にて直進中、対向車が中央線を越えて走行してきたため、避けきれず衝突、負傷。直後から頚部痛等、強烈な神経症状に悩まされる。
【問題点】
本件被害者さん、20年ほど前に頚椎で14級9号認定を受けていた。
【立証ポイント】
以前に14級が認定されたとはいえ、立証作業は変わらないので、しっかりと整形外科でのリハビリを継続していただいた。相手保険会社がのんびりしていたため、8ヶ月半に及ぶ通院にて実績を万全とした。また、主治医が非常に優秀かつ親身だったため、丁寧な後遺障害診断書が仕上がった。
過去に等級認定を受けている件では、「一方、○○様においては、本件事故前△△年の事故により14級の認定がなされており~」という文言が運命を分ける。本件はその文言が記載されておらず、普通に14級認定となった。過去にはなんと33年前の認定を持ち出され、非該当になった案件もあった。諦め半分で申請したが、ご本人も大喜びの結果となった。
このような、「二度目の同部位14級認定」、弊所では3件目となりました。
自賠法と民法、それぞれの原則論はさて置き、2度目の事故が相当の衝撃で、再び相当の障害を負った場合、自賠責は再度の認定を下すことがあります。自賠責保険は、加重障害であっても二度目の内容をよく吟味しています。担当者次第でしょうが、個別に”よく見ている”と言えます。