本件もいつの通り、漏らさず等級をつける作業を進めました。しかし、高次脳機能障害の判定で自賠責が7級、労災が14級と大きな解離がありました。労災は審査請求をしましたが、頑固にも認めず・・・認定基準の違いと言うよりは、文章審査の自賠責と顧問医の面談での違いがでたと思います。

 高次脳機能障害の場合、一見、健常者と変わらないが、家族や職場で長期間にわたり観察した結果、事故前後の変化がわかる障害です。それをたった一回の診察で労災の医師が診察するのです。その医師は、脳外科ではなく整形外科の医師です。高次脳機能障害の臨床経験などないと思います。正直、その(素人?)判断に憤慨しています。

 弊所として、軽度の高次脳機能障害の場合、新たな労災対策を強いられる次第です。
 
1勝1敗でしょうか・・
 

7級4号:高次脳機能障害(60代女性・神奈川県)

【事案】

原付バイクで交差点を横断の際、右方よりの自動車と衝突、受傷したもの。救急搬送され、診断名は外傷性クモ膜下出血、頚椎・胸椎骨折、右鎖骨骨折、左肩鎖関節脱臼、肋骨骨折、右橈骨遠位端骨折、左小指基節骨骨折、右第3指骨折、右腓骨遠位端骨折など・・。

【問題点】

被害者バイク側に一時停止があり、大けがを負いながら、半分以上の過失減額が予想された。幸い、労災が適用され、治療費は減額なく済んだ。また、人身傷害への加入があり、過失分の回収余地はあった。

その前に、たくさんの受傷部位から、後遺障害を漏らさず認定させなければならない。とくに嗅覚・味覚の減退なども重なり、耳鼻科の受診・検査も必要であった。
 
【立証ポイント】

すべての部位について各科ごと医師面談を進めた。高次脳機能障害の程度としては9級に合致するかどうかであった。一方、主治医は以前にお世話になった医師で、診断書の記載内容や傾向が読めたことが何かと助けになった。また、ご家族から日常生活の変化を丁寧に聞き取り、精密な文章を作成・添付した。

結果として、上肢の機能障害は厳しいジャッジで等級を逃すも、高次脳機能障害は、神経系統の障害として総合的に重くみて頂き、7級まで届いた。

逆に、労災では苦戦を強いられ、自賠責の結果とは逆に、高次脳が軽く、肩関節の機能障害を認める内容であった。

その後の賠償請求は、裁判基準での全額回収を目指し、訴訟前提で試算を重ねたが、高次脳の等級維持に懸念があり、人身傷害の回収額をみて、訴訟断念とした。