頭部外傷や脳損傷は大ケガです。しかし、外科的な手術が無い場合、何事もなく回復する患者さんも少なくありません。医師も「大事無くて良かったですね」と退院へ。
本件は、当初まったく障害の兆候がみられませんでした。しかし、微妙な変化は、受傷後3~6ケ月後になって家族の観察により現れてくるもの、あるいは職場復帰後に能力の低下に気付くことなどがあり、簡単に完治などと判断できません。早期に弁護士事務所からご相談を受け、「(高次脳機能障害は)大丈夫とは思いますが、念のため丁寧に観察を続けましょう。いずれ、専門医を受診して検査も行ってみましょう」としました。
その結果は以下の通りです。 本人の自覚はもちろん、家族でさえ気付かない症状を浮き彫りにした、令和初の認定2件(今日と明日)を紹介します。
誰もが高次脳機能障害とは思っていませんでした
7級4号:高次脳機能障害(60代女性・埼玉県)
【事案】
交差点で横断歩道を歩行中、対抗右折自動車が衝突、受傷した。直後から意識がなく救急搬送され、急性硬膜外血腫、腎損傷、肋骨骨折の診断となる。
【問題点】
本人との面談時、腎損傷の影響や肋骨骨折の症状は軽減しており、ほぼ回復していた。しかし他方で、事故後のめまいや耳鳴りが残存した。高次脳機能障害の兆候はほとんど見受けられなかったが、慎重に判断するように心がけた。
【立証ポイント】
退院後、職場復帰をすることになった。家の中では目立たなかった頭部の症状も、家族のいない職場や難しい作業中に出てくることもあるため、家族には職場によく注意してもらうように伝えて頂く。
その後、自宅近くで、頭部外傷や高次脳機能障害に強い病院情報を家族に説明し、医師に紹介状を書いて頂いて転院することになった。転院先の主治医に、病院同行で家族と共に日常生活や職場での状況を伝え、必要なリハビリ・検査内容を設定し治療を進めて頂く。
(検査の一例:トレイルメイキングテスト)
一連の検査から、注意力や遂行機能の低下が明らかになった。これら神経心理学検査を確認し、自覚症状(家族から確認していた症状)と表れていた検査数値と比較し、家族が重くとらえすぎている症状や逆に軽く感じすぎている症状を整合、詳細に日常生活状況報告書にまとめて被害者請求へ進めた。
その結果、高次脳機能障害で7級4号が認定された。なお、本件では頭部外傷による感音難聴で14級3号が認定され、併合7級となっている。