臓器の障害は珍しいものです。その多くは手術で治るもので等級は低めと言えるでしょう。また、手術で治らないひどい損傷、例えば、内臓破裂は大量の腹部内出血を起し、チアノーゼでショック死する危険があります。かつて、衝突事故による内臓破裂で死亡した方がおりました。

 多臓器の損傷、複数の障害となれば、複合的に機能低下が起きるものです。そこで、労災や自賠では多臓器の障害の場合、複合的評価にて等級が認定されます。この辺はあらゆるマニュアル、ネット情報からも得ることはできません。経験のみが頼りになる分野と言えます。  c_g_c_2

11級10号:肝損傷・胆のう障害(20代女性・千葉県)

【事案】

通勤時、自動車で直進走行中、対向車がセンターラインオーバー、正面衝突したもの。自動車の前部は潰れ、左脛骨・腓骨を開放骨折、腹部を強打し、肝損傷の診断となる。

腹部は胆管狭窄・胆のう障害で以後、数度のステント交換手術を強いられる。
ステントとは血管・気管・消化管・胆管などを内側から広げるために用いられる、金属製の網状の筒。
  かんぞう たんのう肝臓くんと胆のうくん
【問題点】

手術実績から認定されるものなので、これと言った立証作業はないといえる。問題は手術を重ねても13級止まりで、将来予想される胆のうの障害悪化について、現時点では判断できないこと。

【立証ポイント】

主治医の術式記載のみで「肝損傷による肝機能酵素上昇」は13級11号、「肝損傷による胆のう摘出」にて13級11号がそれぞれの判定。以上、多臓器の障害が複合的に作用した場合の複合評価となり、11級10号と認定となった。