これは10年以上前の認定と比べて、という前提になりますが、関節の可動域制限による機能障害の認定は、より、画像を精査した上での認定になったと思います。以前は、該当する診断名と後遺障害診断書の可動域の数値から、容易に12級や10級が認定されていたと思います。鎖骨を例にとると、その肩関節の可動域制限は骨折等の痛みが長く続いた結果、動かさない事による関節拘縮を原因とするものです。多くの場合、それは半年~数年で回復が見込めます。対して、自賠責保険の考え方は、「物理的に曲がらなくなった」ことを、画像から判断します。そもそも、生涯治らないものが後遺障害なのです。この点、ひと昔前に比べ、厳密な判断を徹底しているように思います。
本件も遠回りの認定となってしまいました。今後も、機能障害の認定について、より慎重な判断が求められると思います。
審査精度が向上しているとも言えます
非該当⇒14級9号:鎖骨骨幹部骨折(40代男性・埼玉県)
【事案】
自転車で走行中、左方から右折してきた車に衝突され受傷。初回申請で後遺障害申請をするも、結果は非該当であった。
【問題点】
骨癒合は良好であったが、抜釘後も疼痛と肩の可動域が回復せず、屈曲・外転ともに12級レベルの数値となった。ひどい骨折であったため、可動域制限も認定される可能性があると踏んで、初回申請を実施したが、わずか2週間ほどで門前払いの非該当となった。
【立証ポイント】
疼痛の残存に申請を切り替え、主治医に新たな診断書を郵送依頼したが、細かいニュアンスまでは伝わらなかったのか不完全な診断書が返却された。これでは勝負できないと判断したため、ご本人と日程を調整し、医師面談にて追記を依頼、なんとか勝負できる診断書に仕上がった。腕部の残存する症状について後遺障害診断書に記載していただいた。ご本人の困窮点を丁寧に述べた資料を作成し、異議申立手続きに付したところ、40日で14級9号認定となった。
以前は鎖骨骨幹部骨折に伴う可動域制限での認定が散見されたようにも思うが、近年ではその例をほとんどみない。医学的には、「鎖骨骨幹部骨折が肩の可動域を阻害することはほとんどなく、曲がらない理由は筋拘縮にすぎない。」という理由から「非該当」が頻発しているのではないかと思われる。遠位端骨折や肩鎖関節脱臼のような傷病名では12級6号にチャレンジしてもいいが、癒合具合や部位(骨幹部)次第では慎重にならざるを得ない。