正確には頚部ですから、頚髄損傷です。本件等級認定のポイントは四肢の麻痺の程度です。もちろん、完全麻痺の車イス生活ほどひどくはありませんが、ご本人の苦しみは中程度~軽度麻痺を越えるものでした。また、排尿や生殖器、感覚器にも不具合が残り、様々な神経症状が残りました。それらの検査を漏らさず実施、丁寧に収束させる作業が望まれます。その点、受傷直後からのご依頼でしたので、二人三脚で認定まで漕ぎ着けました。
3級認定は大きいと思いますが、それ以上に後の賠償交渉に万全の対策をしてきましたから、連携弁護士も想定された反論を抑える論陣を張ることができます。やはり、事故の発生から解決まで、全体を見通す視点と即応した対策を可能とする事務所にご依頼頂きたいと思います。一歩間違えれば、大変難しい、苦しい交渉になると思います。
( ← 男 秋葉 Va.イラスト)
私達にとっての「奈良判定」、それは、自賠責が既往症を考慮したような等級判定をすることです。これは、後の賠償論での論点であって、自賠責が因果関係を追及するあまり、これに踏み出すことは僭越だと思っています。本件では、自賠法に基づいたジャッジが成されたと思います。
3級3号:頚髄損傷(50代男性・東京都)
【事案】
交差点で信号待ち停車から青信号で発進のところ、左方からの信号無視の自動車の衝突を受けた。直後から上肢・下肢の痺れを発症、救急搬送された。1週間後に症状が急変し、緊急手術となった。急いで頚髄への圧迫を除去する必要があり、椎弓の拡大術並びに、椎間の固定術を行った。
術後も、4肢のしびれ・運動障害・筋力低下に留まらず、あらゆる神経症状(排尿障害、生殖機能の障害、わずかに嗅覚・味覚低下)が発露した。リハビリを2年続けるも、改善が進まなかった。
【問題点】
年齢相応の脊柱管狭窄症、さらに、後縦靱帯骨化症の兆候がみられた。相手損保は既往症の主張をすること必至と思われる。予想される紛争に対し、等級認定まで隙の無い治療経緯と、万全の検査が勝負を分けることになる。
【立証ポイント】
まず、速やかに労災手続きをとって、治療費の圧縮を図る。0:100の事故ながら、相手損保に対して過度なプレッシャーを抑制、つまり、治療費の増大を押さえた。続いて、症状の緩和を優先、鍼灸マッサージを併用したリハビリの延長をしぶとく取り付けた。それでも、1年半経過で、相手損保がしびれを切らした。以後は、労災の休業給付を引っ張り続けて、諸症状の検査を推進、泌尿器科(排尿、生殖機能)、耳鼻科(嗅覚)、歯科(歯牙欠損)受診後、すべてをまとめた後遺障害診断書と申述書を完成させた。
神経系統の障害は諸症状を総合して判断するので、症状を漏らさずコツコツ積み上げることが等級を決める。歯の障害を除き、すべての神経症状を含めた最高等級が認定された。それが、介護状態に至らずも就労不能とされる3級である。今後の賠償交渉に十分なアドバンテージを得たことになる。
身体障害者手帳の申請を既に済まし、平行して労災の障害給付の手続きを推進中、こちらも年金支給の3級を確保する予定。受傷直後からのフォローは確実にして王道、もめてからの受任とは比べ物にならないのです。