顔面線状痕は3cmで12級が取れます。書面審査が原則の自賠責保険ですが、その例外として醜状痕は面接審査があります。ただし、面接を絶対としていません。これは数年前からの傾向でしたが、この節コロナの影響もあってか、12級程度では面接や写真なしでも、医師の図示と計測で認定の件も増えました。
醜状痕12級は自賠責保険の基準で、慰謝料と逸失利益(将来の損害)を一律に合算して224万円限度としています。しかし、後の賠償交渉では、逸失利益を0円と言わないまでも否定する傾向です。その理由は「モデルでもあるまいし、仕事上、顔の傷で減収はないでしょう」です。ぶん殴ってやりたくなりますが、確かに芸能人でもない限り、ただちに減収のない人がほとんどでしょう。これについて、弁護士は職種などから具体的な損害を主張、「営業職なので、顔のキズは仕事上なにかとマイナスがある」とします。弁護士は苦労して逸失利益の獲得交渉をしているのです。ましてや本件は未就職の学生さん、将来、顔の傷がどのように影響するか、現時点ではわからないのです。
医者なら、「自分の傷も治せないの?」と思われそうです
その点、「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)あるいは「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)の場合、膨大な裁判判例が積み重なり、逸失利益の喪失期間について、相場がそれぞれ5年(14級)、10年(12級)とされています。つまり、神経症状の認定があれば、逸失利益は交渉し易くなります。
だからこそ、本件は神経症状の認定にこだわりました。もって行き方次第では、醜状痕だけの認定で済まされていたかもしれません。このような等級の模索は、後の賠償交渉を想定したものです。私達の医療調査は事実証明を果たすものですが、後の賠償方針に最適な解答を探す作業でもあります。受任のほぼ全件が弁護士との連携業務ですから、その点、研ぎ澄まされていると思います。
単なる医療調査を超えた最適解に導く・・これが私達の仕事の醍醐味です
14級9号:頬骨骨折(10代男性・埼玉県)
【事案】
原付バイクに搭乗中、右折してきた対向車に衝突される。顔面骨折と傷跡が残った。
【問題点】
受傷から既に1年が経過しており、頬の痛みや違和感等の症状が不安定であった。事故から3ヶ月目頃、骨折部とは逆側の頬に神経麻痺が出現、他の病院で診てもらっていたが、事故とは因果関係なしと判断され、途方に暮れていた。
【立証ポイント】
主たる病院への通院は5ヶ月前に終了していたため、急ぎ病院同行した。主治医は既に転勤しており、初めての医師に今回の趣旨を説明した。顔面神経麻痺とまでは診断・記載できないが、自覚症状として「違和感、ひきつれ感」と記載、他覚的所見には「手術にて骨膜を剥離したため」との推察を記載頂いた。
約2ヶ月の審査を経て、「骨折箇所が三叉神経の走行部にかかること」が認められたため、神経症状で14級9号を勝ち取った。併合の線状痕の認定がなければ、単独で12級13号が認定もあったかも知れない(ただし、癒合後の画像から難しいと思う)。あらゆる認定パターンを想定していたが、まずまずの結果と思う。
12級14号:顔面線状痕(10代男性・埼玉県)
【事案】
原付バイクに搭乗中、右折してきた対向車に衝突される。顔面骨折と傷跡が残った。
スカーフェイス?
【問題点】
受傷から既に1年が経過しており、症状が不安定であった。また、傷痕についてもそこまで目立つものではなく、写真では分からないレベルにまで回復していた。
【立証ポイント】
主たる病院への通院は5ヶ月前に終了していたため、急ぎ病院同行した。主治医は既に転勤しており、初めての医師に今回の趣旨を説明し、後遺障害診断書にキズの長さを記載していただいた。
本来であれば、調査事務所にて面接があるのだが、新型コロナウイルスの影響もあり、今回は特例として後遺障害診断書の記載通りで審査されることとなった。本件は傷の薄さがネックであり、目立つかどうかが最大の関門であったため、関係者一同安堵する結果となった。