最近、高齢者ドライバーの事故がニュースで採り立たされています。以前にも記事にしたように、国内人口のおよそ3割が60歳以上であることを前提にすれば、高齢者ドライバーの人口比率はうなぎ登りですから事故も当然多くなるわけです。高齢者と事故の関係はそれ程単純な問題ではないと思います。
それでも、対象を”交通事故被害者”とすれば、今も昔もお年寄りに集中します。秋葉事務所における依頼者の年齢層では、60歳以上は20%ほどですが、とりわけ重傷のケースが多く、昨年の高次脳機能障害の受任数13件の内、4件にも及びます。
本シリーズ「昨年の重傷案件」、高齢者層の被害者さまが続きます。
別表Ⅰ 2級1号:高次脳機能障害(70代男性・山梨県)
【事案】
自転車で直進中、後方から追い抜きざまの自動車のサイドミラーの接触を受けて転倒したもの。診断名は頭蓋底骨折、頬骨骨折、骨盤骨折、他に脳挫傷があり、直後から見当識・記銘・言語に障害があり、右半身麻痺から車椅子となった。また、認知症の発症・進行も指摘された。
【問題点】
本人はリハビリ入院中であり、息子さんご夫婦が相談会に参加された。やはり、高齢者の高次脳機能障害であるため、認知症との切り分けがポイントとなった。また、介護状態が年齢相応のものか事故外傷によるものか、この問題も常に付きまとう。
【立証ポイント】
認知機能の低下、言語障害のため神経心理学検査は限定される。障害の種類によっては正確な検査数値が反映されないからである。診断書の作成には主治医と打ち合わせを重ね、ご家族とは日常生活状況報告書の作成に通常より大幅に時間を割いた。その他、精神障害者手帳の申請をサポートし、既得の介護2級と併せて申請に付した。
体の麻痺は軽減し、車イスを脱するまで回復した。それでも、日常生活に随時介護の必要が認められ、別表Ⅰの判定となった。客観的な検査データが乏しくとも、家族や周囲の観察を丁寧に説明することで道は開ける。