本件は同種の傷病名の被害者さまはもとより、交通事故・後遺障害の立証を業とする皆様に参考になると思います。
秋葉事務所では自賠責のルールを最大利用しての解決例がいくつもあります。あたかも、連携系弁護士の賠償交渉を前に、自賠責保険請求にて勝敗を決しているかのようです。
交通事故で受傷した部位に、既に昔からの骨折などが残っていた場合、新たに加わった障害を加重障害として、既往症分を差し引いて評価・保険金支払いを行います。加重障害は自賠責にとって公平を期したルールであり、重なった障害の切り分けに大変有効な手段と言えます。これを偶然ではなく、意識して立証作業を進めています。毎度、同じ言葉を繰り返しますが、後遺障害の立証作業は、審査側である自賠責と意を同じくする作業です。
高齢者の画像からは経年性の骨変化、病変性の骨折や自然骨折など、事故外傷ではない骨折がみつかることがあります。本件は相談会の段階から、陳旧性骨折(昔の骨折)と新鮮骨折(本件事故での骨折)を見極めていました。
8級相当・加重障害:腰椎破裂骨折(80代男性・静岡県)
【事案】
バイク搭乗中、直進していたところ、点滅信号の交差点で右方からの衝突により受傷した。直後から全身の痛みに悩まされる。
【問題点】
相談時に既に後遺障害診断書が完成しており、事前認定で保険会社に提出していた。後遺障害診断書の内容が悪く、このままでは非該当の可能性が極めて高いと判断した。
また、過失割合も被害者が不利、65:35を想定していた。事故相手に対する賠償交渉の余地にも不安があった。
【立証ポイント】
ただちに保険会社から後遺障害診断書を回収し、修正依頼をするため病院同行する。主治医に詳細を聴取した。画像を精査すると腰椎に2ヶ所骨折がみられ、事故によるものなのか疑問を感じた。主治医は1箇所は破裂骨折は交通事故によって起こった骨折と断言したため、破裂骨折で申請する方針を決める。別の箇所に圧迫骨折が見られたが、陳旧性所見であったため、主張からは外して申請する。認定結果は予想しがたいところがあったが、脊椎の2箇所にわたる変形障害で現存障害が8級相当、既存障害で11級7号が判定される。秋葉事務所では多くの例でこのような加重障害の判定を導いている。
自身の過失が大きく、高齢で逸失利益が伸びない事情もあり、この自賠の判定・保険金支払いで事故は解決となった。本件は自賠責保険のルールを駆使して解決を計った典型例でもある。