いかに、自賠責調査事務所に障害を克明に伝えるか・・私達の仕事はこれに尽きます。
とくに高次脳機能障害では、医師の診断だけに頼ることになく、家族から綿密な聞き取りを行い、関連する資料を出来るだけ集めます。その資料とは文章に限りません。写真や活動記録、そして、時には記録映像を作成します。ビジュアルに訴えることは、一目瞭然の例えのごとく、審査側に障害の実像が伝わると思います。
本件では、事故前の活動記録を示す写真が、能力低下の証明に役立ちました。障害の調査は、誰かか自動的にやってくれるものではありません。医師任せでも不十分です。被害者側が積極的に動くものです。さらに、これをお手伝いできる事務所は、実は極めて少ないと思っています。
高次脳機能障害の立証、本件から学ぶことがたくさんありました
5級2号:高次脳機能障害(60代男性・埼玉県)
【事案】
歩行中、自動車に衝突された。頭部を強打し、意識不明の状態で救急搬送、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、頭蓋骨骨折の診断となった。
【問題点】
面談時に易怒性が顕著に現れていたものの、記憶障害やその他の障害については精査の必要があった。ご家族の話では、能力面において事故前との落差が激しいとのことだった。しかし、お住まいの地域に高次脳機能障害を検査・評価できる病院がなく、交通の便も良いとは言えない為、転院先の選定が課題となっていた。
【立証ポイント】
受傷後約1ヶ月時に相談にいらして頂けたので、転院から密着してお手伝いとなった。本来であれば、高次脳機能障害は1年後に症状固定するのが通例だが、本人とご家族の意見から早期解決を目指し、事故後半年で症状固定する方針とした。
元々活動的で多趣味、周囲からの人望も厚く、多くの人に愛されていたであろうという事が分かるエピソードや資料が豊富に残っていた。さらに、ご家族に日常生活での問題行動を記録するよう指示、写真等も加えて集積した。
これらの資料から、受傷前後の対比が非常に分かりやすくなり、日常生活状況報告書でも具体的な主張ができた。高次脳審査会も本件の症状が容易に判断できたのか、わずか48日という期間で5級2号が認定された。弊所の高次脳機能障害の最短認定記録を更新した案件となった。