足指はまだ、審査中の1件が残っていますが、シリーズはここまでにしましょう。本件も自賠責の併合・相当の判定ルール上、大変に勉強になるケースです。
指シリーズは全般的に内容が地味です。ところが、実はメディカルコーディネーターの実力が試される部位なのです。肩や膝の関節と違い、指は関節が多く、計測に大変な時間と手間がかかります。医師も一番、計測が嫌だと思います。もっとも少なからず、計測は理学療法士に一任することになりますが、理学療法士さんにとっても、指の計測の頻度は少なく、面倒な作業でしょう。一方、診断側だけではなく、審査側である自賠責・調査事務所も、毎度、診断書の記載不足=「計測が不足していますので追加計測を!」にうんざりだと思います。
ここでのポイントは、「全て計測する必要はない」と言うことです。無駄な計測作業を割愛する、しかし、自賠責が要求する計測は漏らさない・・・これこそ、私達の経験と技術が集約される場面なのです。双方の負担を減らし、間違いの無い等級認定に導くには、知識はもちろん、医師と円滑に折衝できる人間力も必要です。これができる事務所は極めて少ないと思います。
もう、指はすべてうちに任せて!
9級相当:足指欠損・機能障害(40代男性・東京都)
【事案】
バイク運転中、交差点で自動車と出会い頭衝突、足を受傷。足関節開放骨折に加え、足指すべての指がやられた。それぞれの症状は以下の通り。
・母指(親指)→ 硬直、可動域制限
・示指(人さし指)→ 硬直、可動域制限
・中指 → 壊死、欠損
・環指(薬指)→ 壊死、欠損
・小指 → 変形、可動域制限
【問題点】
長期のリハビリも機能回復が進まず、数年が経っていた。自賠責の申請をしていないことに気付き、相談会に参加された。足指の申請はマニアックな分野であり、欠損は見た通りで問題ないが、機能障害については正確な計測が必要である。専門性を評価いただき、ご依頼となった。
【立証ポイント】
医師面談の末、正確な計測を促し、その数値を専用の計測表にまとめていただいた。指の計測は面倒で、医師も大変な労苦となるので、できるだけご負担をかけない配慮と工夫が必要。まさに専門性を発揮する場面となった。さらに、写真と申述書を添えて提出した。
およそ2ヶ月の比較的短い審査期間であったが、認定等級は以下の通り。
① 親指、人差し指、小指の関節機能障害から、「1足の親趾を含み2以上の足趾の用を廃したもの」として、11級9号。
② 中指、薬指の欠損で、「1足の第3の足趾以下の1または2の足趾を失ったもの」として、13級9号。
①と②の障害は同一系統(機能障害)の障害なので併せて10級相当になるが、9級15号「1足の足趾の全部の用を廃したもの」より重くも、8級10号の「1足の足趾の全部を失ったもの」より軽い、したがって、9級相当の判定に。この辺は難しい計算ながら、認定基準に沿った論理的な結論となる。