一時期と違い、違法(弁護士法72条)ながら、行政書士がこそこそ賠償問題に介入するケースは減ったと思います。私どもは基本、弁護士と連携して業務を遂行していますので、その法律的な境界線は守っています。しかし、そもそも弁護士を介入できないこともあります。時に、保険会社の少ない支払い基準であろうと、相対交渉がベターとなるケースです。本件の場合も、事故状況はあいまいに、保険会社を刺激せずに穏便に進める必要がありました。それでも、綱渡りの進行で、依頼者さん共々神経をすり減らしました。
行書だもの(by ゆうじ)
8級1号:視神経管骨折・失明/7級12号:顔面醜状痕(30代男性・千葉県)
【事案】
路上で横臥していたところ、自動車にひかれた。頭部は頭蓋骨骨折、急性硬膜下血腫との診断。顔面は右頬骨骨折により、顔面神経麻痺を併発、さらに、視神経管骨折により、片目を失明した。
【問題点】
幸い、高次脳機能障害の兆候はなく、片目の失明と顔面の陥没と線状痕が残存した。
手術痕を含めた線状痕の他に、こめかみから頬にかけて陥没痕とゆがみが見られた。事故前の写真と比べると、人相が変わってしまったくらいはっきりしていた。いつもの通り、経過的な写真を残し、申請に備えた。
本件の問題は事故状況と責任関係。路上横臥中では判例でも50:50が相場、半分は自己責任となる。何より、自動車が頭部・顔面に接触したかが不明瞭だった。加害車両の保険会社は不明瞭ながら対応してくれたものの、やはり、後遺障害保険金が莫大となるので、最終的に裁判基準の賠償額を請求すれば、過失を全否定してくる懸念があった。弁護士を介入させたら相手保険会社に火をつけることになるので、あくまで、保険会社と穏便に直接交渉を続ける方が得策だった。
また、自身加入の保険会社に対して、減額された50%分を人身傷害保険で回収する問題も残った。この請求も一筋縄ではいかない。弁護士を使わずの請求・・苦戦は必至となった。
【立証ポイント】
後遺障害の立証は毎度の手順で、病院同行にて検査結果を回収、医師と打ち合わせの上、間違いのない診断書を確保した。また、醜状を示す詳細な写真(事故前、事故直後、症状固定時期の最新)の打ち出しを準備、提出した。面談の要請もあったが、これも問題なくクリアした。もちろん、等級は想定通りに認定された。
弁護士に頼らず、また、相手保険会社の顔色を伺いながら、交渉での限界数字に引き上げた。この点、行政書士は法律上、介入できない。だからと言って、弁護士に頼めず、裁判や紛争センターでの解決も避けるべきで、保険会社基準での妥協した金額は仕方ない。
最後に、人身傷害を2社(2台分加入があった)に請求、それぞれ渋った対応であったが、すったもんだの末、提示額の多い方の会社にて妥結、保険会社基準ながら100%の回収にて本件を終えた。