後遺障害を審査する自賠責保険・調査事務所は審査上不足あれば、申請後であっても、病院への「医療照会」や「画像の追加検査の依頼」との形で、資料を補完する作業を進めます。しかし、症状固定日までに必要な検査を実施し、記録を診断書に残しておかなければ、改めての検査や診断を病院が拒むことがあります。事務上、症状固定日で事故治療との関連は絶たれた、と考えるからです。
他にも症状が変化・改善した、本例のように被害者さんの事情で病院に通えなくなった等、様々な障壁が生じるのです。したがって、基本的には症状固定日までに必要な立証作業を終えなければなりません。
後遺障害を審査する調査事務所が毎回、柔軟な対応をしてれくれるとは限りません。その点、本例は助かりましたが、挙証責任は被害者にあり・・自らが訴え、資料を提出しなければ、後遺症は無かったことになってしまうのです。
11級7号:腰椎圧迫骨折(50代男性・神奈川県)
【事案】
バイクで走行中、交差点を左折した直後に相手方自動車が反対車線から右折進入してきて接触、転倒した。救急搬送後、入院した。診断名は第一腰椎圧迫骨折。
参考画像
【問題点】
相談を受けたときには、既に主治医に後遺障害診断書を依頼していたため、診断書が完成するのを待つことにした。しかし、CTやMRIの撮影を症状固定時期にしていないことがわかった。さらに、間の悪いことに、近日引越し予定で、主治医のいる病院から離れてしまう。
【立証ポイント】
圧迫骨折の変形所見を調べるためには、圧潰率をMRI画像等で確認する必要がある。この点、主治医は、症状固定後は交通事故として診察をしたがらず、また、通常の診察も拒んでいた。やむを得ず、CT、MRIの撮影は引っ越し先の近くの病院で行うことにし、主治医には紹介状だけ書いて頂いた。
その病院に同行したが、医師に入室を拒まれた。このようなことも予想して、事前に打ち合わせを入念に行い、紹介状を渡すと共に相談者にCT、MRI撮影の希望を文章で伝えた。
画像は無事に撮影され、CDに焼いて頂いたものを弊所で確認した。椎体は圧潰しており、圧潰率を主張するため、椎体のつぶれた方とつぶれていない方のそれぞれの長さを計測した画像打出しを用意して申請にあげた。
結果、11級7号が認められた。症状固定後であり、かつ症状固定までに通院したことのない病院で撮影した画像であっても、調査事務所は考慮してくれたのである。
調査事務所は判断に必要な資料であれば、柔軟に検討、妥当な等級を認めてくれるという実例と言える。