脛骨の骨折により、左右の脚長差が生じる短縮障害ですが、イリザロフ法や人工骨の挿入など、整復術の発達もあって、およそ改善させることができます。秋葉事務所でも、3cmの短縮障害はみたことがありません。

 1㎝の短縮障害(13級8号)はたまに認定を得ています。1㎝程度の短縮では、左右の股関節がバランスを取ってくれるので、普通に歩けます。深刻な障害ではないからこそ、13級止まりなのかと思います。

 子供さんの場合は、成長期を通して骨が爆発的に成長しますので、その過程で左右差が解消するようです。それでも、ご両親にとっては将来の障害が心配、なかなか症状固定に踏み込めないのです。本件でも、症状固定のタイミングはじめ、治療と等級確保の両立に腐心しました。
 
回復と損害賠償の両立は常のテーマです
 

13級8号:脛骨遠位端解放骨折・短縮障害(10代男性・埼玉県)

【事案】

道路を横断中、左方より走行してきた自動車に衝突され、足首を骨折した。開放骨折後の骨端線損傷と診断され、経過観察を続けた。
 
【問題点】

骨癒合が過度に進んでいるため、骨長調整手術を行うことになった。主治医からは「成長が止まった段階まで経過観察しなければ何とも言えない。」との説明を受けたため、ご両親もどこで一区切りつけるのか迷っていた。主治医の見解やご両親のお気持ちも理解できるが、保険会社が10年近く面倒みてくれるはずがない。どこかで「症状固定」としなければならなかった。
 
【立証ポイント】

症状固定のメリット・デメリットを説明し、ご本人やご両親、主治医が納得するタイミングを模索した。事故から丸2年というところで折り合いがついたため、後遺障害診断時に自覚症状、開放創と脚長差の計測を依頼した。見込み欄には「今後も定期的に経過を観察する必要があり、成長に伴い、骨長に左右差が生じた場合には、再手術の可能性がある。」という関係者全員(相手保険会社は望んでいないと思われるが)が納得する文言を記載いただき、審査に付した。

子どもの骨折(しかも骨端線損傷)では十分な回復が見込め、14級9号に留まる可能性もあった。しかし、「解放骨折」の重傷性から、脚長差の後遺障害が認められた。他に13級以上の認定がなかったということも要因(その場合には、併合扱いになるため、審査が厳しくなる印象がある)の一つではないかと考える。

今後、成長とともに脚長差が広がり、再手術ということは考えにくいが、可能性はゼロとは言えない。その点、後遺障害認定を得たことで、ご両親も納得の解決へ向かうことができる。