医師は診断権を持っています。医師が黒と言えば黒、患者は馬も鹿と言わなければなりません。
 
 私達も最大限に医師の診断権を尊重しますが、患者が症状を訴えても、「後遺症などない」、「診断書は書けない」と医師が診断権に基づいて判断することがあります。その場合、別の病院・医師に転院すれば良いのですが、初診からの医師が後遺障害を否定することは、仮に新しい医師に後遺障害の診断を受けたとしても、自賠責保険の審査上、当然に不利な履歴として残ってしまいます。

 私たちは年間200件を超える病院同行を10年以上続けています。病院同行の数はもちろん、その造詣は他事務所の追随を許さないと自負するところです。本件の病院でも、医師より事務方が頼りになることを事前に把握していました。そこで、医師との掛け合いはスルー、婦長・医事課に話を通して、診断書の確保に至りました。

 付け焼刃の病院同行ではありません。まるで、製薬会社のMRさんのように、病院内外の様々な情報を把握するようにしています。病院に限らず、どの組織・会社でも内部の力関係や派閥、独特の関係があるものです。その点、毎日のように病院に出入りしているMRさんと話が合います。先日、最終回を迎えたドラマ「私の家政夫ナギサさん」でのMRの活躍に、「ある、ある」を感じた次第です。

※ MR(Medical Representativ=医薬情報担当者)… 医師に自社の薬の成分や使用方法、効能について説明をする専門職。医師に薬の成分や効能、副効用を説明し、契約を取り付けます。つまり、日本では薬の営業も兼ねます。一般的にMRは製薬メーカー勤務となります。
 
ザビ家も一枚岩ではないのだよ
 

12級13号:肩鎖関節亜脱臼(50代男性・山梨県)

【事案】

バイクに搭乗中、信号のない交差点にて右方から進入してきた自動車に衝突され受傷した。直後から全身の痛みに悩まされる。とくに、肩の痛みが強く、

【問題点】

救急病院では単なる打撲の診断しかなく、レントゲンでも異常所見はなかった。また、主治医が最後の最後になって、後遺障害診断書は他院で記載してもらうようにと途中で投げ出してしまった。

【立証ポイント】

近隣の整形外科を受診したところ、肩鎖関節亜脱臼の診断名がついたが、他院にてMRIを撮影するも異常所見はないとの書面が返ってきた。とりあえず、痛みの継続で最悪14級を確保すべく、リハビリ継続を指示した。

後遺障害診断前に両肩のレントゲン撮影を終えた後、後遺障害診断書を依頼したところ、主治医が記載を拒んだ。そこで、その病院で何故か一番権力を持つ婦長と事務員の協力を得て、無事に診断書を入手した。申請書類には、事故直後と症状固定時のレントゲン打ち出しを加えた。

コロナ渦中ということもあり、審査に2ヶ月半を要したが、消極的に想定していた14級9号ではなく、12級13号認定に届いた。この力業にご本人も大喜びであった。