というのも、10年前位は、診断書の数値通りの認定が容易だったと思います。しかし、近年、後遺障害申請数は増加の一途、また、ネット情報の伝搬から可動域を装う詐病者や、それを示唆する業者の影響からか、より厳しく可動域制限を審査するようになったと感じます。

 そもそも昔も今も、審査基準に照らせば、関節の機能障害における可動域制限は、骨折部位・様態と症状固定時の癒合状態から、「物理的に曲がりが悪くなった」原因を必要としています。つまり、画像所見で判断しています。また、計測の正確性も見ています。医師の書いた診断書の記載内容は絶対ではなく、常に審査側の判断・解釈に委ねられているのです。

 本例の骨折箇所と骨折様態から、癒合状態が良好ながら、それ程可動域の数値は疑われないものでした。すると、後は正確な計測だけです。関節可動域の回復のために一生懸命な理学療法士先生には頭が下がる思いですが、ケガの苦しみに見合った等級を残したいものです。シビアに計測をして頂きました。

理学療法士先生の気持ちはわかります
  

12級6号:上腕骨頸部骨折(60代女性・埼玉県)

【事案】

自転車で道路を走行中、後方から前方不注意の車に追突を受ける。肩関節内で上腕骨を骨折し、救急搬送された。6ヵ月間のリハビリに励むも、可動域制限が残った状態で症状固定となった。

【問題点】

今回の件では、症状固定前に何度か病院へ同行、リハビリにも立ち会っていた。理学療法士の技術と尽力から可動域は回復傾向に。改善は何よりではあるが、毎回一生懸命に可動域拡大訓練の後に計測をするので、12級6号の基準「4分の3」を超えてしまう懸念があった。

もう一点は、幸い良好な骨癒合から、可動域制限を否定される可能性があった。

上記2点を対策しなければ、機能障害を否定される。

【立証ポイント】

後遺症診断時は診察室へ同行し、医師に自覚症状等を誤りなく伝える。次いで、医師の許可を得てリハビリ室に立会い、計測値に間違いが起きないか笑顔で目を光らせる事で無事、抜かりの無い後遺障害診断を完成させた。

申請の際は、受傷時のCT画像打出しを添付し、受傷状態を訴える。リハビリ状況についての申述書等、出来る事は全て行い、無事12級6号の可動域制限を認めてもらうことに成功した。

(令和3年5月)