私はかつて保険会社のSC(サービスセンター=保険金支払部門)に配属されたことがあります。対人・対物・傷害各門の担当者は超多忙の毎日で、それこそ常時100件もの案件を抱えています。とくに対人担当者は、打撲捻挫などの軽傷は3ケ月以内で治療費の打切りを意識し、「そろそろ(治療の終了は)いかがですか?」と、軽傷と思われる被害者さんに毎日電話をしているわけです。
それでも人間のやること、たまに忘れたのか電話が遠ざかってしまい、放置状態となることがあります。すると、打ち切り攻勢なきまま、静かに通院実績を重ねることができます。経験では、14級9号の認定者の多くにみられる傾向は、症状の重篤度もさることながら、保険会社と軋轢なく6ヶ月通院した患者さんです。その点、本件は放置され治療実日数を稼げた結果、ギリ認定を得ることができました。治療費打切りを巡ってひどく争った被害者さんは、その悪印象から症状を疑われたのか、どうも認定結果が振るわないように思います。
14級9号:頚椎捻挫(50代男性・静岡県)
【事案】
オートバイ搭乗中、交差点で信号待ちしていたところ、自動車の追突を受ける。直後から頚部痛のみならず、手指のしびれ等が残存した。
【問題点】
整形外科に通っていたが、途中で仕事が忙しくなり、整骨院も併せて通院するようになっていた。今後の方針として、仕事が繁忙期を過ぎたら、リハビリ設備が整っている整形外科に通うようアドバイスをする。
【立証ポイント】
事故から3か月後、保険会社から治療費の打ち切りの打診があった。事故から半年までは治療費を出して頂けるよう、お願いをするが、その後、保険会社から連絡が途絶えた。事故から半年後も症状が残存していながら、通院回数が少なく、14級を狙うには心もとなかった。そこで、保険会社から正式に治療費打切りの連絡があるまではリハビリに励むことになった。
事故からちょうど7カ月目あたりで、突然思い出したのかのように、担当者から治療費打切りの連絡があった。通院回数はギリギリ間に合ったので、勝負(申請)をかけた。なんとか14級9号が予定通り認定された。