自賠責が単なる保険請求の審査に比して厳しく見る点、この道に熟知している者は一様に口を揃えて言います。

相当因果関係

 簡単に言えば、「事故のせいで痛めた」事がはっきりしていなければなりません。後遺症を残すような大ケガの治療や診断が遅れることは、どんな言い訳(主治医がヤブで診断できなかった、他の部位を優先して治療していた・・)をしようとも、不自然極まりないのです。また、部位によっては既往症の疑いがあります。以前から痛めていたのではないか?との検討もしているのです。

 したがって、事故受傷にすべての原因があるか否かについて、白黒をつけるのは大変難しい時があります。その場合、「逃げ」ではありませんが、労災での認定をもって矛を収める現実路線をとることがあります。本ケースはその典型例です。労災からの給付だけですとやや少ない補償額となりますが、争って0円よりはずっとましです。

 すべての解決が明瞭ではありません。それでも私達は依頼者の利益の最大化を模索しているのです。
 

労災 12級6号:TFCC損傷(30代男性・東京都)

【事案】

自動車で通勤中、交差点で後方よりの左折車の巻き込みで受傷、膝と手首を傷めた。後にTFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)が判明した。

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【問題点】

受傷後は膝の治療が中心となり、手関節の治療及び診断が遅れた。後に専門医から手関節の手術の示唆を受けるが、保存療法を選択した。治療経過から自賠責は因果関係を厳しく見てくると覚悟した。

【立証ポイント】

基本通り、MRI画像はもちろん、専用の診断書に詳細な診断を記載していただいた。しかし案の定、確定診断の遅れから「非該当」。カルテ開示を行い、受傷直後からの症状の訴えを拾い集めたが、決定打はなく、異議申立てでも否定された。

ある程度、想定していたので、平行して労災での後遺障害申請を進めた。仮に事故受傷以前から損傷が進行していたとして、それは業務の影響である。

自賠責は悔しいながら断念、傷害慰謝料の増額交渉を連携弁護士に委ねた。後遺障害については労災12級6号で補償を受けて決着とした。