ここ10年の自賠責保険の認定数の推移をみると、確かに認定率は低下の傾向です。理由は分母、そもそも申請数が増加しているからです。交通事故全体では、人身事故数は低下していますが、反比例に後遺障害申請が増えているのです。とりわけ、むち打ちの14級9号審査は右肩上がりに増えたと思います。

 個々の認定実績をみていると、認定基準自体に大きな変化はないようです。ただし、人が審査するものですから、審査担当者の判断で、”調査の範囲”が違うようです。本件でも、執拗に医療照会がかけられました。初診からすべての医療機関に「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」等を依頼するケースです。一方、主たる治療先だけの同書から再審査・判定するケースもあります。このような調査範囲の違いは昔からの事ですが、前者が原則になったのか?、多くなったように感じます。

 症状の一貫性が命の「むち打ち14級9号」、治療先が多いと、それぞれ医師の判断にばらつきが起きやすく、一貫性の維持が難しくなるのです。

今回もハラハラ、薄氷を踏むような認定でした
 

非該当⇒14級9号:頚椎捻挫(50代女性・東京都)

【事案】

バイクで走行中、減速したところ、後続の自動車に追突され負傷した。直後から頚部痛等、強烈な神経症状に悩まされる。

【問題点】

事前認定で非該当、次いで既に相手方から賠償額の提示が出ている状況からのご相談であった。症状固定日後、3ヶ月は通院していたが、相談時は既に通院を止めており、再申請を急ぐことに。

【立証ポイント】

資料を精査すると、整形外科と鍼灸を併行受診していたが、「整形外科と鍼灸が連携している」ことが判明したため、異議申立手続きで認定の可能性を感じた。急ぎ、面談の2日後に病院同行した。後遺障害申請に理解ある主治医だったため、記載内容について踏み込んだ打合せをすることができ、勝負できる医証が仕上がった。

面談から40日あまりで提出、結果を待つばかりだったが、調査事務所から「救急搬送先(最初にたった1回しか通院していない)治療先」に医療照会をかけたいとの連絡があったた。先回りして、主治医の記載した資料をそれぞれの病院に提出し、やれるだけのことをして結果を待った。

受理日から3ヶ月の審査期間を経て、無事に14級9号が認定された。1回だけ通院の病院に対して、経緯書を確認したところで、新たな発見や経過について分かるはずないと思うが、最近は全ての病院に医療照会がかかる傾向にある気がする。14級9号の認定には、通院先をなるべく少なくすることも留意すべきか・・。