弊所は、平素から高次脳機能障害を見逃さないよう、頭部外傷のあった被害者さんをよく観察し、慎重に立証作業を進めています。しかし、頭部や脳にに外傷があったとしても、まったく症状がないこともあります。私達は丁寧に、障害が無かったことを確認するまでです。
一方、審査側である自賠責保険は、平成12年に高次脳機能障害について、いくつか改定をしました。見逃されやすい障害であるからでしょうか、新システムの一環として、「疑わしい案件」については積極的に調査をすることにしました。今までも、頭部外傷の件に対して、数々高次脳審査の打診を受けてきました。「高次脳的な症状はないので、大丈夫ですよ。ご親切にどうも」と回答しています。本件でも数度に渡って打診がありました。
このような、審査側からの調査打診・・他の障害ではみられません。神経系統の障害、とくに頭部外傷による高次脳機能障害はそれだけ、見逃されやすい障害なのだと思います。
こういうところに自賠責の親切心を感じます
併合14級:頚椎・腰椎捻挫(60代男性・埼玉県)
【事案】
自動車にて直進中、右方より信号無視で交差点内に進入してきた車に衝突され負傷。直後から頚腰部痛、両手の痺れ等、強烈な神経症状に悩まされる。
【問題点】
治療途中に慢性硬膜下血腫が見つかったため、その後のリハビリ頻度が減ってしまった。また、側頭部に裂傷があったが、髪の毛と耳で隠れてしまう箇所であるため、等級認定には結びつかない可能性が高かった。
【立証ポイント】
受傷初期から対応できたため、治療先を整骨院から整形外科に変更していただいた。通院先の医師との折衝や検査依頼等については、弊所のアドバイスに従い独力で進めた。事故から半年後に症状固定とし、スムーズに後遺障害申請が実施できた。
本件は、軽度の意識障害(JCS1桁・健忘もあったが、翌日には意識清明)があったため、自賠責調査事務所から再三にわたって、高次脳機能障害の審査が打診されたが、ご本人にそのような症状が全くなかったため、何度もお断りしてムチウチの審査に絞っていただいた。通院回数は少なかったが、事故態様が「大破」に分類される事案であり、軽度の意識障害もあったことから、何ら問題なく14級認定となった。