靭帯損傷による膝関節の動揺性の立証・・・今や交通事故を扱う弁護士・行政書士にとって、ストレスXPはおなじみの検査となっています。秋葉事務所でも30件を超える実例を経験してまいりました。
膝の主要4靭帯(前十字、後十字、内側側副、外側側副)が完全断裂しないまでも、部分断裂(靭帯繊維の一部が切れた)、深層断裂(組織内部の断裂)の場合、靭帯が伸びて、膝関節が「ぐにゃ」っと崩れるような、やっかいな機能障害となります。当然、歩行に支障きたすレベルでは手術適用、膝蓋腱から靭帯を移植したり、金属で補強するなど、いくつかの術式があります。それ程に深刻な動揺性がない場合は、周辺の筋肉(大腿4頭筋など)を鍛えて、関節をしっかり保持するリハビリ指導、運動療法も行われています。
自賠責保険の後遺障害の立証では、膝が「ぐにゃ」としていることを「主張する」だけではダメです。他覚的・医学的に証明しなければなりません。「ぐにゃ」っとしている証拠が必要なのです。
そこで、膝を前方に引っ張った、又は左右に折った状態のレントゲン写真を撮る必要があります。通常、医師は治療の過程でわざわざそんな検査はしません。損害賠償上の必要性があることを、こちらから医師に理解を促す必要があるのです。だからこそ、私たちの仕事の存在価値があると言えます。
前置きが長くなりましたが、関節に圧をかける機材として、テロスなるものがあります。(↓ 写真)
左右(外反・内半)はテロスが有効と思います
テロスで膝関節をゆるんでいる方向に曲げます。この設備のある病院は大変貴重です。多くの被害者さんにとって、(検査できる)病院探しに苦労するはずです。しかし、稀に協力的な医師が存在するもので、テロスがなくても徒手で関節を引っ張って撮影して下さいます。そのような医師に何度か救われてきました。
また、経験上、前十字靭帯の場合は、徒手による撮影の方が明確な画像になる傾向です。もちろん医師の徒手技術に左右されますが、私自身も前方引出し検査、ラックマン検査を励行していますから(医師の指導のもと)、ゆるんだ膝関節を前方に引き上げるコツみたいなものを、身をもって感じています。
断言します、テロスより徒手による撮影がベターです。機会あれば、依頼者さまのご許可を頂き、徒手によるストレス画像をお見せしたいと思います。
ストレス撮影できる病院を探すのにストレスを感じます
非該当⇒12級7号:前十字靭帯損傷 異議申立(10代男性・埼玉県)
【事案】
自転車で走行中、店舗の駐車場から後進してきた車と衝突し、受傷。直後から膝の痛みに悩まされる。
【問題点】
事前認定で申請するも結果は非該当。理由としてはストレスXP撮影がなされていないことが記されていたが、「事故態様(物件事故)・骨折がないこと」が不利になっていることも予想された。
【立証ポイント】
主治医にストレスXP撮影若しくは他院への紹介状を依頼すると、幸いなことに立証作業に興味を持ってくださり、主治医自らストレスXP撮影をしていただけることとなった。元々、後遺障害診断書上、他覚的所見があったが、より詳細な書面=「膝関節の動揺性について」に記載頂き、ストレスXPの画像を添付して異議申立手続きに進んだ。
(参考写真:これはテロスという専用機材を使ったもの)
事故態様(物件事故であること)や骨折がないことに不安はあったものの、約40日程度の審査で12級7号が認定された。両親としては、最愛の子がここまで苦しんだにもかかわらず、「非該当」とは何事だ!というようなテンションであったため、「お金」<「子どもの苦しみが認められた」ということに大満足していただけた。
後遺障害は認定されたが、将来ある子供さんの更なる回復を祈りたい。