③ 関節の靱帯を断裂した場合
靱帯とは、骨と骨とを結びつける結合組織繊維の束からできているひも状のものをいいます。この主成分はコラーゲンなどです。
※ 骨と骨格筋(骨を動かすときに使う筋肉)を繋ぐのは腱といいます。
靱帯は関節の位置を形成し、正常な関節の動きを保つ働きをします。
もし靱帯を完全に断裂してしまいますと、関節を動かすことができず、関節の可動域制限が生じることもあります。しかし、靱帯を外傷によって完全に断裂した場合、激痛で動けなくなるレベルです。医師もすぐに調べ、靱帯が断裂していることが確認できれば、すぐに手術をするのが通常です。
靭帯を完全に断裂すると再生は非常に困難であるため、周辺の腱を切り取って靭帯の代わりにする再建手術を行う必要があります。そして、手術後リハビリをすることで関節が動くようになります。ただ、損傷がひどい場合、事故から半年後等、症状固定時期になっても完全に回復しきれない場合があるため、関節の可動域制限が生じることがあります。
完全に断裂している場合、MRI画像で明確に描出されます。
← 肩の靱帯(棘上筋)断裂のMRI・T2画像
他方で、靱帯が完全に断裂するレベルに至らなかった損傷の場合もあります。
その場合、ある診断名では深層断裂という表記になっておりましたが、その時に診て頂いた相談者の主治医の話では、その相談者の靱帯損傷は外傷性によるものではなく、既に痛めていたところを、交通事故がきっかけで痛みが生じることがあるという説明でした。
この完全断裂しなかった靱帯損傷が画像上明確であれば、可動域制限がなかったとしても、疼痛から12級13号の等級が、また、事故が引き金で疼痛が発生したような場合であれば14級9号が、それぞれ認定される可能性があります。
※ 靱帯が断裂するに至らなかったが、伸びてしまい、靱帯としての機能を果たせなくなる場合もあります。例えば、膝の前十字靭帯を損傷した場合、関節を動かすことそのものは可能なので、関節の可動域制限はリハビリ不足による筋拘縮がない限り、そこまで問題になりませんが、逆に関節が緩んでしまい、動きすぎてしまうことがあります。
この場合は可動域制限の検査ではなく、徒手検査やストレス撮影によって、靱帯の働きが悪くなっていることを後遺障害診断書に記載して頂く必要があります。