近時の依頼者さまは、自ら「左側に黒いもやもやがあって、見えない」ことをある程度自覚していました。外傷性網膜はく離など、直接、眼球にダメージを受けた結果による視覚障害は、「見えない」ことを自覚できます。しかし、半側空間無視は見えないことが自覚しずらく、昨日の解説のように、周囲の観察と検査で明らかにする必要があります。

 しかし、兆候を掴むにしろ、検査誘致するにしろ、まず、ご本人とご家族に半側空間無視をわかっていただく必要があります。そこで、以下の事例説明を用いています。
 
(1)テレビが昔に戻った?

 左側の視野が認識できないのですから、正面からテレビを観ると・・

 
  ワイド画面が ↓
   

 今は普通の16:9のワイド画面が、昭和の4:3画面に戻るのです。これを高次脳機能障害の依頼者さまに質問したところ、「そうです! テレビが昔に戻ったと変に思っていました」と回答され、障害の実像をご理解、自覚頂けました。
 
(2)チャゲがいない?

 ご存知、チャゲ&飛鳥。このデュオはステージに向かって左がチャゲさん、右が飛鳥さんと決まっています。二人の間隔も必ず210cmと決まっているそうです。二人のステージをワイドテレビで観ると、半側空間無視の影響でチャゲさんが消えます。
 
 左半側空間無視の障害者は、「あれ? アスカのソロコンサート?」との反応になるわけです。
 
 逆に(稀ですが)右半側空間無視の障害者の場合は、「あれ? チャゲしかいない」となります。決して、アスカが捕まってソロになったわけではありません。
 
 昭和の方ですと、年代に応じてピンクレディーを用いますが、ザ・ピーナッツの場合は左右対称?でややこしくなるので使いません。平成ではコブクロさんで、「サングラスの方がいなく、ギター持っている方だけ」となります。
 
 このように、身近なテレビを使った話法が、半側空間無視の理解、自覚を促すことに効果的です。これらの実例は、弁護士向け研修会でもよく使っています。
 

※ あくまで抽象的な事例的表現であり、医学的見地からの解説ではありません。症状の判断、診断には専門医の受診が必要です。