(Q)共稼ぎの妻を会社に送り、迂回して出勤の途上、交通事故受傷しました。通勤災害と認めらるか?
 
 弊社の従業員の田中さんは夫婦共稼ぎをしています。 昨日、田中さんは妻を会社に送り届けた後の通勤途上で交通事故受傷しました。 田中さんの自宅を起点にすると、彼の妻の勤務先は弊社を通り過ぎて約1km先となります。 つまり、寄り道=回り道をして交通事故受傷しているのですが、この場合、通勤災害の適用は可能でしょうか?

 
(A)労災は、「合理的な経路なのか、」を検討します。本件の場合、迂回の距離が問題になるようです。
 
 3つの例から検討します。
 
① 自宅から同一方向で妻の勤務先が約450m離れているとき、 マイカー通勤の共稼ぎ夫婦で、妻の勤務先が同一方向にあって、しかも夫の通勤経路からさほど離れていない場合は、 2人の通勤をマイカーの相乗りで行い、妻の勤務先を経由することは通常行われることであり、合理的な経路として取り扱うのが妥当であると判断しています。

② 自宅から同一方向で妻の勤務先が3km離れているときは、 妻の勤務先が同一方向にはあるが、迂回距離が3kmと離れており、著しい遠回りと認められるところから、 これを合理的な経路として取り扱うのは困難と判断しています。

③ 別のケースで、自宅から同一方向で妻の勤務先が4km離れているときは、 これは②の事例に従って却下されたのですが、被災労働者は労働保険審査会に対し、「当時、妻は妊娠8ヵ月の身重であり、満員のバスに乗れる状況になかった。」として異議を申し立てました。

 結果、妻は妊娠8ヵ月の身重の状態であり、バスに乗るにも十分に注意しなければならなかった時期であったことを勘案すれば、被災当日、最短の通勤経路から多少離れて妻を勤務先まで送ったことは、やむを得ない必要な行為であったとして、 通勤災害を認定したのです。

 このように、迂回の距離がかなりあったとしても、迂回の理由によって認められるケースもあります。
 
 本件の場合、同一方向かつ、距離が1km以内ですから、認定されると考えます。
 
※ 注意が必要なことは、迂回距離の1Km、3Kmは、労災が絶対的な基準として公表しているものではありません。「寄り道は○km以内」と明確な基準を設定しているものではなく、③のように迂回の理由を含め、通勤路の距離や通勤手段などから総合的に検討、個別判断していると思います。