Q 営業の佐藤さんは仕事を終え、「いつもの飲み屋で待っているよ、」と同僚に声をかけ、先に仕事を上がりました。いつもの飲み屋は佐藤さんの行きつけの店で、日比谷線八丁堀駅出口前にあり、佐藤さんの通勤経路上となります。その飲み屋に向かう途中の横断歩道で交通事故受傷したのですが、通勤災害の適用は可能でしょうか?
A 終業後、飲み屋に向かう途中の事故受傷であっても、事故場所が通勤の経路上にあれば、通勤災害の適用が可能です。
確かに、飲み屋に出かける目的で会社を後にしているのですが、労災保険では通勤行為について、そこまで厳格に個人の意思を捉えているのではありません。 外形的に判断すれば、紛れもなく通勤途上となりますので、適用がなされます。
ただし、飲み屋に寄った後は、通勤経路上であっても、寄り道となり、通勤目的から外れますので、適用できなくなります。
Q 妻の入院している病院から通勤の途上、交通事故受傷したが、通勤災害となるでしょうか?
これは、妻の付添看護のため、夫が寝泊りしている病院から徒歩で通勤の途上に事故受傷したものです。 自宅ではありませんが、通勤災害の適用は可能でしょうか?
A 通勤災害の適用がなされます。
レアケースですが、労災保険は、「入院中の妻の看護のために、夫が病院に寝泊りをすることは社会慣習上、通常行われることであり、 かつ、手術当日から長期間継続して寝泊りしていた事実が認められるところから、当該病院は被災労働者にとって就業のための拠点としての性格を有する住居と認められる。」と解釈しました。
同様の事例で、長女の出産に際し、その家族の世話を目的として長女宅に泊り込み、長女の子供を託児所に預けた後の通勤途上で、交通事故受傷したケースでも通災が認められています。 つまり、労災保険では社会慣習と継続性を問題にする傾向です。
「夜が遅くなって、遠方の自宅に帰りそびれ、友人の家に泊まった翌日、友人の家から通勤の途上、交通事故で受傷をした場合は?」 これは、たまたまのことで、継続性に問題があるため、通勤災害とは認められません。