今月も何件か被害者請求の後遺障害等級申請がありました。被害者にとっては一日も早く保険がおりて、早急に事故を解決したいものです。依頼を受けた以上、私もできるだけ早い申請を心がけています。しかしスピードには反しますが、すべての診断書や書類が揃った段階で今一度、書類を精査します。もう一度、当初からの計画を振り返り、認定等級の可能性を見つめます。これは初回申請が命!と思っているからです。
交通事故外傷によって受けた被害に対し、すべての症状とその根拠となる客観的資料が揃っているか?治療経過に問題はないか?被害者の責に帰する不適当な医証はないか?・・・あたかも私自身が調査事務所の担当者になった気分で臨みます。
とにかく初回申請が不調で異議申立て、これだけはご免です。
異議申立ての実態
巷では「異議申立を引き受けます」、「まず申請してダメなら異議申立をしましょう」、「異議申立てに実績のある行政書士です」、「弁護士による異議申立て(効果があります)です」・・・等々、異議申立てのオンパレード。このようなことをホームページや看板に掲げる専門家に違和感を禁じ得ません。
なぜなら異議申立ては単なる許認可の却下に対する再申請とは訳が違います。自賠責は公の保険の掛金を預かる機関であり、保険金の支払いを抑制することも大事な仕事です。この抑制とはもちろん正当な審査を経た結果を指しますが、経験上保険金請求者に対し、非常に厳しい目で審査しています。そして一度厳密な審査をした以上、容易には覆せない決定です。
このように認定された等級には、正式機関での審査を経た重みがあるのです。
異議申立てとは「その審査結果が間違っています!」と主張する事です。許認可の申請が不備となり、認容される為に足りなかった追加資料を提出する再申請とは難易度が違うのです。
それは異議申立ての成就率がここ3年、7%前後となっていることからもわかります。
したがって、初回勝負が大事なのです。私はさらにこう考えています。一部医証が欠落もしくは不確実であっても、書面上で伝わる被害者の人間性がもっとも信頼されるのは初回であると。
それは杓子定規な書面審査ながら、調査事務所は資料の信頼性について独自の判断をしているように思えてならないのです。つまり申請者すべてが気の毒な被害者ではなく、保険金のためにウソを言う詐病者、大げさな主張する被害者など不正者がたくさん存在する・・・審査側はこのような予断を持っているはずです。加えて、気の毒にも後遺障害を被った被害者には、それなりに正しい医証が残るはずで、初回申請での提出資料がもっとも信憑性がある・・・そのように考えられているはずです。
やはり時間が経ってからの追加検査、新しい医師の診断書は証拠価値が落ちるのです。
異議申立ては最大の愚策と断言します。
現在、事前認定(相手保険会社に申請手続きを任せる)や被害者請求を考えている方は、今一度立ち止まって熟考することをお勧めします。
異議申立て成功率?
異議申立ての成功率を誇る広告を目にします。その法律職の皆さんの努力経験に基づくに実績には敬服します。たくさんの被害者を救ってきたことでしょう。ただし、この数字だけを単純に鵜呑みにしないようにして下さい。自賠責公表の異議申立の等級変更率が7%ほどなのに、その法律家に頼むと80%に跳ね上がる?・・そんな魔法のような技が存在すると思いますか?そして自賠責の初回認定はそんなにいい加減なのものでしょうか?・・そんなわけありません。
これはすべての異議申立て相談者の80%ではなく、「これは絶対通るだろう」被害者だけを受任し、実際に申請した数字からです。確率が低い件は受任・申請しませんのでこの数字から除外されます。さらに数字はあくまで自己申告です。他者の監査がない以上、いくらでも脚色できます。この仕事に関わっている専門家なら「80%などあり得ない」と一笑に付します。
これは商売上、目を引くための数字です。冷静に読み取って下さい。ちなみに受任・申請したものだけからの成功率で言うと私は50%です。もちろんこの数字から「異議申立て断念」とした相談者は含まれていません。50%程度でも十分良い成果と思っています。そして、できれば被害者に「異議申立てをさせない事」を仕事の主義としたいのです。