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膝の靭帯、ACL(前十字靭帯)とMCL(内側側副靭帯)はペアで痛めやすい部位です。サッカー選手のケガでも1、2を争う好発部位です。交通事故でプラトー(高原)骨折や半月板損傷した場合も、併発の予断を持たねばなりません。しかし軽微な損傷であれば、医師は特別な検査をせずに保存療法とします。したがって、手術をするような高度な損傷、多くは膝が崩れる動揺性が生じますが、それが顕著でなければ痛みや不具合が残ってもそのまま、つまり後遺障害が見逃されます。
今日は膝の靭帯の障害について、診断から立証までを3つの段階に整理します。膝の主要4つの靭帯すべてに応用できますが、最近受任が多いMCL損傷を例にとりましょう。
ステップ1:MRI
膝の痛みを訴えればXP(レントゲン)を撮るでしょう。XPで骨折がみられなければ、「膝関節打撲・捻挫」となります。しかし、単なる捻挫と違う痛みが続けば、靭帯の損傷を疑って早めのMRIが望まれます。
画像はT2冠状断で、MCLが全体的に膨張して、縦に白い線がみられます。これは液体貯留です。ここまではっきりしていなくても、高輝度所見=炎症が見られれば、少なくとも軽度損傷、あるいは部分損傷と診断されます。まずはなによりMRI検査が第1ステップです。
ステップ2:外反動揺性テスト
MCL損傷の程度は外反動揺性テスト以下3段階評価します。
1度損傷=不安定性なし
2度損傷=軽度の不安定性
3度損傷=高度の不安定性
医師が徒手検査で行い、「外反動揺性〇cm」と判断します。もし膝下が外側にぐにゃりと動く場合、相当の断裂があるため、手術の検討となります。自覚症状では、階段を降りる時や歩行中に急に曲がる際、膝に不安を感じるはずです。それほどでもなければ、装具の着用で経過を観察となります。
ステップ3:ストレスXP
軽度の損傷であれば、医師の多くはステップ2で診断名を確定させて終わりでしょう。しかし、自賠責の後遺障害等級認定で12級7号以上を目指すのであれば、このストレスXPは必須の検査です。脛骨を外側に押し出した状態でレントゲンを撮るものです。通常、脛骨(膝下)は外側に曲がりません。わずか数mmは動くかもしれませんが、1cm以上も動けば動揺性の程度が深刻です。これにてMCLの断裂の証拠が完成するのです。
後遺障害等級
8級6号
動揺関節で労働に支障があり、常時固定装具の装着を絶対に必要とするもの
10級10号
動揺関節で労働に支障があるが、固定装具の装着を常時必要としない程度のもの
12級7号
動揺関節で通常の労働には固定装具の装着の必要がなく、重激な労働等に際してのみ必要のある程度のもの
12級13号
動揺性はほとんどないが痛みがひどく、損傷がMRI上損傷が顕著な場合
14級9号
痛み、不具合の残存。12級13号との差はMRI上微妙な場合。決め手は症状の一貫性と信用性
患者にこのような知識がなければ、医師の当たり外れに運命を任せることになります。外れれば後遺障害認定はなかったことにされます。痛い思いをして、何年も膝に不安感が残り、そしてもらえるはずの賠償金何十万~何百万円を失うことを意味します。