最近、重篤なケガの依頼が続いています。毎度、初期対応が大事です!と訴えていますが、私の心配など無用とばかりに、特に問題も起きず、なんと言っても保険会社が優しく、支払いについて何も渋らないそうです。これらはつまり、誰が見ても重篤なケガで、重い後遺障害が確実な被害者です。
最近でも脳障害で3級が予断できる被害者、両足の骨折と神経麻痺で用廃の6級が見込まれる被害者さんに対する保険会社担当者は実に親切丁寧な対応です。そして治療費や休業損害はもちろん、装具代、自宅改造費用、差額ベット代やタクシー代等、無茶な項目でなければ快く支払に応じてくれます。
さて、このような保険会社担当者の対応を分析してみましょう。(つまり保険会社の本音を言います)
重い障害が必至で症状に疑いのない被害者さんに対し、もし厳しい対応、支払査定など行ったらどうなるでしょう・・・確実に被害者の敵意は向上します。すると弁護士に依頼され、高額な賠償金を請求してきます。そうです、本当に重い被害者は絶対に怒らせてはいけないのです。高い後遺障害等級が認定されますので、数千万円の賠償金が発生します。これを裁判基準ではなく、保険会社基準で示談させることに成功すれば、仮に4000万円の支払いが2000万円に節約できます。つまり保険会社は2000万円の支払を防ぐためにどうすればいいか必死になります。それが「優しい対応」なのです。私はこれを「仏顔作戦」と呼んでいます。それだけ保険会社基準が安すぎるのがそもそもの問題ですが。
この保険会社の作戦、もとい被害者救済的対応が成功すれば、被害者も示談のときに「大変、お世話になりました」と言わないまでも、保険会社の提示額をベースに交渉、少し上乗せしたくらいで判を押してくれるかもしれません。
ちなみに示談までに支払った治療費、休業損害は当然ながら既払い分となります。問題となるのは様々な費用、雑費などが精神的損害である慰謝料から差っ引かれることがあることです。今までの気前の良い支払いは何のことはない、示談金の前払い、ということになります。「仏顔」の裏には「鬼の顔」も隠れていることがあるのです。最後に泣かされてはたまりません。
保険会社と喧嘩するのは愚の骨頂ですが、懐柔されるのも問題です。
被害者とは常に冷静、クールかつ賢明、クレバーでなければなりません。