シリーズ2回目、自賠責保険の例を取り上げましょう。
 
 後遺障害を審査する自賠責保険・調査事務所では、後遺障害の申請をしっかりカウント、その記録を保存しています。申請書が届くと、既に後遺障害認定を受けているか、申請の全件について請求・認定歴を検索します。なぜなら、同じ部位の障害で二度目の申請がきた場合、加重障害として、審査する必要があるからです。これは、一度交通事故で後遺症を負い、後遺障害認定を受けた被害者さんが、不幸にも同じ部位に同じケガをしたケースです。

 既に14級9号「局部に神経症状を残すもの」として認定を受けた障害者には、同じ程度の障害が重なっても加重障害となり、二度目の認定・14級の保険金は、

 現存障害で支払う保険金75万円-既存障害での既払い保険金75万円=0円 となります。

 そのようなルールから、申請・認定歴は必須情報なのです。

 また、ケガの部位や症状が別物であることから、加重障害とならず、事故の数だけ何度も認定を受けていた被害者さんもおりました。症状によっては、再度、14級認定される場合もありますが、なんと34年前の認定を理由に加重障害0円の結果もありました(これは弊所の最長記録)。やはり、むち打ちや腰椎捻挫などは、「14級は1度だけ」の傾向です。むち打ちを含む外傷性頚部症候群や腰椎症などは、慢性化しやすく、何度も痛みが復活することが多いものです。理論的には加重障害ですが、本音は「前回認定で味をしめたな、二度目はダメよ」と、自賠責の心の声が聞こえてくるようです。

 何度も事故に遭い、後遺障害申請が2度3度の依頼者さんは常連組と言えます。運か悪いのか、相当なうっかりさんではありますが、事故状況・受傷機転から、確かに不幸が重なったケースです。しかし一方で、明らかに怪しい、不正が疑われる、あるいは大げさな「後遺障害申請・常連さん」も存在します(当然、そのような人達に肩入れはできません)。前述の通り、自賠責は請求履歴から、常連さんを把握しています。既にマークされていると言っても過言ではありません。相当、疑いを持った目で審査されると思います。申請・認定歴は、このような常連組みへの警戒にも利用されるのです。

 ここからは私の妄想ですが・・・自賠責保険・調査事務所のオフィスでは、連日、大量の申請書が届きます。その受付をする窓口担当者さんが、パソコンのデータを検索して・・・
 

 「○○さんからまた申請が来てますよ! 
 
   え~と・・・5年ぶり3回目の申請です!」


 
 と、声を上げているのではないでしょうか。
 
 

 
 「5年ぶり3回目の出場」と聞けば、誰もが高校野球の甲子園出場のことと思います。これも、損保業界、とくに自賠責保険の後遺障害請求に応用される言い回しでもあるのです。