↑ 左のレントゲン画像は、第2腰椎が損壊し、変形しています。右のMRI画像では、椎体の一部が脊柱管内に突出し、脊髄を圧迫しているのが確認できます。
<総合南東北病院 低侵襲脊髄手術センター長 水野 順一先生のHPから画像を引用しています。>
(1)病態
圧迫骨折は、前柱のみの楔状変形で安定型骨折でしたが、破裂骨折では、前柱だけでなく、中央柱にも骨折がおよび、中央柱から遊離した骨片が脊柱管内に突出して、脊髄損傷をきたすことがあります。
圧迫骨折より不安定であり、圧迫骨折を安定型、破裂骨折は不安定型と呼んでいます。交通事故では、高エネルギー衝突、それに伴う墜落で垂直方向に外力が加わり、発生しています。
秋葉事務所では老若男女、様々な認定例がありますので、併せて参考にして下さい。
(2)症状
当然に激痛です。お笑いタレント、スギちゃんは、2012-9-1、千葉・習志野市内で、高さ約10mの飛び込み台に立ち、足からプールに飛び込むバラエティー番組を収録中、第12胸椎破裂骨折で入院しています。このとき、スギちゃんは、骨折部の激痛でプールから上がることができずに救急搬送されています。幸いに、脊髄に損傷はなく、4週間の入院と保存治療で復帰しています。
(3)治療
診断は、XP検査で確定します。XPで脊柱管内に骨折がおよんでいると思われるとき、椎体骨折部の粉砕を疑うとき、また診察で脊損を疑う所見があるときは、CTやMRI検査が行われています。高齢者で、骨粗鬆症が疑われるものは骨密度を測定も行われています。
椎体の後壁まで圧壊している破裂骨折では、痛くて起き上がれないことがほとんどで、一般的には、入院下、ベッド上で3週間程度、簡易コルセットによる外固定で安静加療で様子を見ます。痛みが軽快すれば、硬性コルセットを装着して歩行リハビリが開始されますが、激しい腰痛が続き、起き上がることができなければ、手術が行われています。また、安静経過中に脊損を原因とする麻痺などが出現したときは、可及的速やかに手術が行われています。
手術の内容ですが、MRIで椎体後壁の骨片が脊柱管内に突出している破裂骨折では、骨折椎体内部の壊死組織をきれいに掻爬して、内部にリン酸カルシウム骨ペーストを注入、上下の椎体にもスペースを作成してから骨ペーストを注入し、脊椎インスツルメントにより、スクリュー固定がなされます。
(4)後遺障害のポイント
Ⅰ. 破裂骨折ともなると、正常に癒合しないことが多くなりますので、脊椎骨の変形障害が予想されます。経過的に画像を観ますが、症状固定時の画像で11級7号が判断されます。
また、脊椎の固定術を行った場合、文句なしの認定となります。
胸椎の認定例 👉 11級7号:胸椎破裂骨折(40代女性・埼玉県)
腰椎の認定例 👉 11級7号:腰椎破裂骨折(40代男性・神奈川県)
固定術での認定例 👉 11級7号:胸椎骨折(40代男性・埼玉県)
Ⅱ. 上記の表の通り、椎体の損壊によって後弯に及ぶもの、複数の椎体骨に損壊、あるいはそれに相当する変形、腰が曲がる、が基準に及べば、8級2号が認定されます。6級5号は、表の通り、さらに基準が上がります。
死後2年経って8級を立証した希少例 👉 8級相当:腰椎破裂骨折(70代女性・静岡県)
Ⅲ. あくまで癒合後の変形が8級レベルに及ぶことが条件ですが、腰椎の可動域制限が1/2以下となれば、8級2号と判定されます。経験上、腰の可動に影響のある下部(L4〜L5)の椎体をみていると思います。
6級5号は、複数の椎体が損壊し、脊椎固定術によって腰の可動域がほとんど失われる「硬直」のレベルです。腰の可動を犠牲にしてまで、金属で固定しなければならない最悪例と言えます。弊所での認定例はまだありません。
腰部の可動域制限から8級となった実例 👉 8級2号:第5腰椎破裂骨折(60代男性・千葉県)
Ⅲ. 若年者で保存的治療のときは、受傷から6カ月で症状固定とし、遅滞なく8級2号もしくは11級7号の認定を目指します。
これまでの経験則では、単体の破裂骨折は少なく、その上下に圧迫骨折を伴っていることがほとんどでした。それぞれの圧壊率を計算し、後遺障害診断書に記載を受けなければなりません。もっとも、医師も正確に数値化できませんので、やはり、画像上の判断で審査されます。
子供さんならではの逸失利益をにらんだ実例 👉 11級7号・14級9号:腰椎破裂骨折(10代男性・千葉県)
Ⅲ. 高齢者の場合、6カ月での急いだ症状固定には無理がありますが、それでも、6カ月が経てば症状固定を選択しています。
また、元々腰が曲がった高齢者の場合、脊椎自体が変形していることも珍しくありません。事故での損壊と切り分けて立証する必要があります。
切り分けた実例 👉 8級相当・加重障害:腰椎破裂骨折(80代男性・静岡県)
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