加害者側の任意保険・担当者は「常に被害者への支払いを少なくすることが仕事」「後遺障害を認められないように妨害する存在」なのでしょうか?
営利企業である保険会社が支払いの抑制に傾くのは当然の摂理でしょう。それでは低い賠償金で解決させれば優秀な社員となるのでしょうか?・・そんな単純なものでありません。対人担当者の成績を評価する上で、「支払い保険金の抑制」は評価が難しい項目と言えます。なぜなら、約款の規定以下の少ない保険金で示談した場合、それなりの理由がなければ倫理上、問題とされるからです。つまり、原則「約款に則り、適正な支払い」をしなければなりません。
支払い保険金の多寡はそもそも、保険会社の基準が裁判基準に比べ極端に低く設定されていることが原因です。これは結局、自賠基準→任意基準→裁判基準のトリプルスタンダードの問題に帰結します。そうなると、賠償金を自賠責保険の範囲で解決させること、なるべく任意保険からの支払いを少なくすることは評価になるようです。
それでは、担当者の評価で一番の項目は何でしょうか? それは”案件の処理スピード”です。担当者は毎月10件ほどの交通事故のファイルが机に置かれます。あっという間に年間100件です。つまり、毎月10件づつ解決していかなければ、どんどんファイルが溜まっていくのです。担当者が必死に「治療費の打切り」「示談」を切り出してくるのは、単純に「急いでいるから」です。
掲題に戻ります。それでは、後遺障害申請の場合、一括社意見書なるものが必ず添付されるのでしょうか?そして、必ず被害者に不利になるようなことが書かれるのでしょうか?
まず、前提ですが、この書類もマル秘扱いです。表向きは「存在しない」とされても仕方ないでしょう。当然に社外秘はおろか、社内でも限定された者しか目に出来ません。顧問・協力弁護士にも見せませんし、存在すら言わないものです。だからと言って、裏の必須書類とまでは言い過ぎです。実務上、全件に添付されるわけでもなく、また、書面とは限りません。消極的な物言いですが、「被害者の詳細情報が等級審査に必要な情報となり、任意社から調査事務所へその情報伝達が遮断されることはない」、これが正解です。
明らかに軽いケガでありながら長期通院していること、賠償志向が強く詐病者と疑われるような事情、問題のある被害者・・これらの情報は必ず伝達するでしょう。これはある意味、必要な情報伝達と言えます。さすがにネットで書かれているような、恣意的・不当に被害者を貶めるような、認定を妨害することはほとんどないと思います。「絶対ない」とは言えないところがなんとも・・開示されない(存在しない?)以上、わからないからです。
そして、昨日の最後に書きました、逆に「被害者に等級を認めてもらう意見書」も存在します。それは、障害が明白であり、気の毒な被害者である情報はもちろん、示談の際に賠償金額を盛る必要があるケースで起こります。それは、後遺障害が認められて「後遺障害保険金があった方が大きい賠償金を提示できる」ことを意味します。
次回、わかり易く実例で説明します
つづく