本日の病院同行は新幹線に乗って他県まで足を伸ばしました。本件むち打ちの依頼者さまは、当初、弁護士に依頼して進めてきたのですが、等級審査の結果は「非該当」。やり直しの仕事となりました。
詳しく事情を聞くと、その弁護士からMRIについて「所見がないから提出は止めましょう」と留められ、相手保険会社に後遺障害診断書のみを提出するよう指示を受けたそうです。つまり、交通事故の知識がお粗末ゆえ、提出書類不足まま「事前認定」としてしまったのです。おまけに、弁護士は単なるむち打ちながら、主治医に電話でカルテ提出を要請したそうです。
その主治医と面談したのですが、当然ですが、法律家への不信感から苦言をいただきました。
主治医よると・・その弁護士から電話で高圧的にカルテ開示を求められ、理由を尋ねると、「何で出せないんだ!」と逆切れされたそうです。この弁護士って・・調べてみると案の定、悪いことをして懲戒を受けている先生でした。
この弁護士の是非は言うまでもないのですが、問題は根底にある人間性、言い換えると歪んだ職業意識ではないでしょうか。
その日の夜、BSで映画『おくりびと』が放映されました。2度目ですがしっかり鑑賞しました。ご存知と思いますが、本木 雅弘さん演じる主人公は「納棺士」という、この映画によって認知が広まったマイナーな職業です。亡くなった人をきれいにして棺桶に治める仕事です。劇中、主人公の妻である広末 涼子さんはその仕事に偏見を持ち、最初は反対します。しかし、夫の仕事に立会い、その真摯な姿勢をみて・・その職業への意識を改めます。
この映画で特出なことは、納棺士の所作の美しさではないでしょうか。死者を送る作業随所に誠心が感じられ、凛とした緊張感だけではなく、清清しさ、暖かさやユーモアすら感じます。そして、周囲の遺族のすべてに追悼の念が沸き起こります。この映画が宗派を越えて、世界中から評価された理由がよくわかります。そこには誰にでも訪れる死に対し、”人間の尊厳”が宗教を超えて普遍的に謳われているからではないでしょうか。
このように、真に仕事に打ち込む姿は職種に限らず「美しい」ものだと思います。「心は所作に表れる」と言いますが、心を尽くして作業に没頭する姿は人間の一番美しい姿ではないでしょうか。仕事はそのような境地で取り組むことが理想と思います。そこには損得計算、傲慢など、雑念はありません。
そのような仕事人は美しく見えるはずです。しかし、驕慢心があっては決して美しく見えない。また、人の仕事に敬意を払っていなければ美しさを見出すこともできない。「職業に貴賓なし」と言われる通り、他人や他人の職業に敬意を払えない人には何も写らないでしょう。そして、そのような人は自らを醜く描出してしまうと思うのです。これは、医師、弁護士、どのような職業でも同じです。
私の仕事、メディカルコーディネーターも世間的にはマイナーな仕事です。人知れず日々病院に同行しています。医師にご迷惑をおかけすることもあります。なかなか周囲に理解されないかもしれません。
それでも、私の所作は美しく見えているでしょうか?