さて、人身傷害特約の約款改定も触れないわけにはいきません。東京海上の発売から16年、もはや個人契約自動車保険には80%以上付帯されています。発売当初、「夢の実額補償」「過失があっても全額補償」と謳われた保険でした。

 
 特約について詳しくは ⇒ 人身傷害特約のおさらい

 
 しかし、実額補償と言っても日本では保険会社の計算する賠償金と裁判の相場ではものすごい開きがあったので、様々な矛盾、問題が噴出しました。

 その一つは、
 

「人身傷害はあらかじめ保険会社が支払い基準を定めた傷害保険である」  sanmaつまり保険定食?

 これに対して、「人身傷害特約に裁判基準の賠償金を請求できないか?」

teresaつまり、対人賠償に同じく「つぐない」の金額を尊重すべき?

 
 ことあるごとに、低額の「保険会社基準を押し通す」保険会社と、より高額の「裁判基準」を請求する被害者とのせめぎ合いが生じたのです。

 
 一方、この問題を置き去りのまま、一つの決着がつきました。

 人身傷害特約を先行受領した被害者が相手に損害賠償請求を起こした際、人身傷害を支払った保険会社の求償額について問題が浮上、法廷で争われました。平成19年2月東京地裁判で「差額説」が採用された後、各社、”人身傷害が先行支払いされた場合の求償額について”、約款の改定・追加を行っています。この問題は、平成24年2月最高裁「差額説」の判決にて完全決着となりました。
 しかし、未決着の論点もいくつか残しました。それは人身傷害から先行して支払いを受ける場合と、相手から賠償金を受け取ってから自身の過失分について人身傷害を請求する場合では、受け取る総額で違いが出ることです。つまり請求する順番によって損得が生じる点を司法から指摘されました(これは後にわかり易く解説します)。
 

 このように毎度、問題が顕在化してから約款改定を続けてきたように思います。やはり「最初から約款が未整備だった」とのそしりは免れません。そして、今回の損保ジャパンの改定では一定の整備が成されたと思います。 
 
 
 長い前置きとなりました。明日から約款の修正・追加を見ながら支払い基準の変遷を追っていきましょう。