ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が大好評だそうです。話題につられて、普段ドラマを観ない私も途中から視聴しています。
 
 ドラマの内容はご存知と思いますが、念のため・・妄想癖のある大学院卒業・高学歴女子の主人公みくりさんは就職活動が上手くいかず、派遣会社に就職も派遣切りで無職に。そこで、独身サラリーマン津崎さんの家政婦になりますが、成り行きで契約結婚とします。周囲には普通の結婚の外形を取り繕います。そして、二人の関係がリアルに変貌する経過を毎回、面白おかしく追っていきます。

 このドラマの人気は何ゆえか? 二人を中心に周囲の人達を群像劇として観れば、あることに気付きます。それは、役柄それぞれ、誰しも当てはまる、悩みや問題を抱えていることです。・・派遣切り貧困女子、結婚しない・できない男性、同じく独身女性、シングルマザー、性同一性障害、周囲との疎外感をもつ帰国子女、誤解されるイケメン男子、高齢化する親、そして、経営難の会社・・これらは、生きるか死ぬかのような深刻度ではないのですが、それぞれにとっては悩ましい問題です。その普遍性が視聴者の共感を生んでいるのでしょう。

 そのような人達に、作り手はユーモアたっぷりに暖かい視線を注いでいます。そして、劇中、お互いに理解を深め、助け合っているところが人間ドラマとしての完成度を高めているように思います。
 
 さて、翻って交通事故被害者です。今年も既に274名のご相談を受けました。これはメール・電話相談を除き、実際に面談した被害者さんの数です。毎年300人面談が5年も続いていますので、この経験からも世相を語ることが出来そうです。 
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 相談者の傾向ですが、年々、派遣やアルバイト等、非正規雇用者が増えているように思います。それも20代の若年層ではなく、30代~50代も少なくないのです。また、高齢者ではない、働き盛りの無職者も多い。邪推かもしれませんが、仕事をバリバリやっている層は事故にあうことが少なく、事故となっても、病院に通う暇が無いほど多忙のようです。そして、フルセットの保険に加入していることが多く、まさに「金持ちケンカせず」、もめることなくあっさり解決のケースが多いのです。社会的弱者に特に交通事故が降りかかり、また、その経済的環境から交渉も難航します。同程度のケガで比較しても、何故か社会的地位や所得の低い被害者は通院や休業期間が長いのです。あくまで印象であり、統計数字として断定するには、軽率かもしれませんが・・。
 
 これら交通事故被害者さん達に、ドラマのような暖かい視線は注がれません。周囲の助けも期待薄でしょう。被害者を取り巻く環境、つまり、保険会社や病院、警察、職場、どれもそれぞれの職分を全うすればよく、一被害者に肩入れなどしません。特に保険会社は営利企業であり、被害者を救済するために機能してはいないのです。社会的・経済的に困窮しようと、扱いは平等、基準に則った機械的なものです。被害者の経済力を考慮した特別な配慮などされません。むしろ、「賠償志向の強い被害者」と断じ、冷たい対応になります。

 被害者さん達は圧倒的に不利な立場であることを、まず自覚すべきと言えます。

 周囲の助けをあてにしても、ドラマのようなハッピーエンドは起きません。実利ある解決は、現実と向き合い、しっかり戦った者だけが達成するものです。そこには1日も早く事故に算段をつけて、復職を果たし、仕事・日常を取り戻す努力が必要です。交通事故と言うドラマにも最終回を迎えねばならないのです。

 相談会は被害者さん達の不幸に同情する場ではありません。事故から卒業するお手伝いをする場と思っています。