大腿骨、脛骨の骨折で癒合後に骨が短くなった場合、または半月板損傷で半月板の切除術を行った場合、いずれも重度の障害を残すことは明白です。骨癒合が良好であれば14級、癒合不良や変形、転位で膝の可動域制限が4分の3、もしくは装具の重労働時の使用では12級7号となります。骨・半月板の明確な変形・転位があり、可動域が半分、または装具の常時使用が必要であれば10級以上の障害が濃厚です。
いずれも12級以上となった場合、可動域制限や装具の使用状況で12~10級を確保するとして、注意すべきは加えて下肢長の左右差を計測し、診断書に落とし込むことです。仮に1cmの短縮があった場合13級が、3cmの短縮であれば10級が加算されて、結果としてそれぞれ等級が一つ併合で上がります。5cm以上の左右差であればそれは外見上もはっきりわかる大変な障害(8級5号)で、装具もオーダーメイドされた特殊な物になります。これですと短縮障害がメインの障害といえます。
今年年初からから下肢長の計測が2件続きました。今日は計測法を復習します。
短縮障害の計測法
(1)CR画像ソフトにて計測
現在、XP(レントゲン)撮影の際、フィルムに写しだす方法の他、パソコンにデータで取り込むことが主流になりつつあります。それをCR(computed radiography)と呼びます。フィルムの代わりにイメージングプレートを用い、X線の情報をここに記憶させ、これをスキャンしてコンピューター処理により画像を得る装置です。簡単な例えで言いますと、XP(カメラ)⇒CR(デジカメ)です。持ち運びにかさばるフィルムと違い、CD等に落とし込むため取扱いも便利です。
CRは下肢長の計測についても便利で、CR画像を観るソフトに長さを測る機能が入っています。左の図、脚の上に縦に白い線が入っています。これは画面上でも正確に長さを測ることができる定規です。
多くの画像ソフトに入っている機能なので、短縮障害が予想される方にはなんとなくこの画像上の定規をあてる癖がつきました。
(2)ロールフィルムにて計測
ミラーカメラを使用することにより、人体に照射したX線を蛍光板で受けて画像化する際に使用されるフィルムです。レントゲンのパノラマ写真と思っていただいてよいでしょう。
長いレントゲンフィルムに巻尺をあてて測ります。等尺大の写真からの計測なのでこれも正確です。審査上、正式な計測方法とされています。
(3)XPフィルムをつなげて計測
これはロールフィルムの設備がない病院で苦肉の策として用いられます。普通のレントゲンフィルムをセロテープでつなげます。半切りサイズ(35.6×43.2cm)を2~3枚つなげればロールフィルムのように脚全体を観ることができます。
アナログな方法ですが、実は現在その作業をしています。
(4)補足
★ いずれも計測の基準は大腿骨の転子部から脛骨の末端までです。これは股関節と足関節の代償による誤差を排除するためです。人間は左右どちらかの脚が短くなれば、それをかばう為、特に股関節で調整を取ろうとするからです。
★ 短縮障害は骨自体の短縮を指しますが、膝関節部の骨折で骨癒合後も膝関節が硬縮し、1cmほど短くなってしまったケースを多く経験しています。これは骨自体の短縮とは言えませんが、骨折状態と骨癒合の結果として1cmの短縮(13級)程度なら多くの認定を受けています。