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 下肢シリーズ、最後に足指を解説します。骨折や脱臼、指の腱の断裂から物理的に指が曲がらなくなることもあれば、脛の神経(腓骨神経、脛骨神経)の断裂や麻痺から、自らの意思で動かなくなります。まれに、骨盤部の坐骨神経や、腰椎の神経根症状から、麻痺が足趾に及ぶこともあります。その可動域制限は以下の表にまとめてあります。

 機能障害以外の後遺障害は「欠損」でしょうか。最後には、しびれや痛み等の神経症状、お馴染みの12級13号か14級9号で評価されます。今回は後遺障害だけ解説すれば十分でしょう。何より、実例を参考にして下さい。
 
(1)計測

(2)欠損と機能障害の等級表
 
 それぞれ、表を見て頂いた方が早いと思います。
 


 
 母趾の腱を切った為に動かなくなった実例 👉 14級8号⇒11級9号:第3~5中足骨骨折後、母指拘縮 異議申立(50代女性・山梨県)
  
 足指の障害、その集大成の実例 👉 9級相当:足指欠損・機能障害(40代男性・東京都)
  
◆ 既往症との関係、例えば外反母趾

 事故外傷以前から、指が曲がっているなど、既往症の関与にも触れておきたいと思います。足指を骨折して、曲がりが悪くなったとして、その機能障害は健側(ケガしていない方)と曲がる角度を比較します。ところが、健側が元々、外反母趾等で曲がりが悪い方もおります。痛風の方で親指が変形・硬直している方もおりました。

 この場合、健側の既存障害を医師に説明して、診断書に特記してもらう必要があります。機能障害の立証において、既往症との比較ではこれが基本です。
 
 その実例 👉 14級9号・14級8号⇒11級9号:母趾基節骨+第5趾中足骨 骨折 異議申立(60代男性・東京都)
 
(3)神経症状 それでも痛みはしばらく残る

 足指に限らず、骨折等あれば、正常に癒合したとしても、痛みはじめ何かと不具合は残るものです。秋葉事務所では、医師が「後遺症はないよ」言っても、あきらめず、以下のように認定に導いています。 小指をタンスの角にぶつけた痛みを思い出して下さい。
 
 その好取組 👉 14級9号:右足母指剥離骨折(30代男性・千葉県) 
  
◆ 足趾計測の障壁

 骨折や脱臼、伸筋腱・屈筋腱の損傷で物理的に動かなくなった場合は、計測者が手を添え、曲げて計測する「他動値」で判定されます。他方、神経麻痺などで動かない場合は、自らの意思で曲げることができないので、計測は計測者が手を添えない「自動値」で判定されます。この違いを理解していない医師がそこそこおりおますので、足指の計測にはほとんど立会っています。理学療法士さんなら心得ていますので、リハビリ室で計測することも多いものです。

 最大の問題は、医師が「足関節は計測するけど、足指まで測る必要あるの?」と面倒がることです。毎度、先生方に平身低頭、お願いしています。足趾は、関節の計測の中でも最も面倒な部位かも知れません。実際、可動域を後遺障害診断書に記載されないまま・・・つまり、足指の障害は無かったことで解決に進みます。
 

 
 次回からは上肢シリーズに入ります。