足根骨 踵骨々折(しょうこつこっせつ)
(1)病態
踵骨(しょうこつ)は、かかとの骨で、直接、地面に接して体重を支えています。踵骨骨折は、大きく分類すると、以下の2つです。
① 捻挫や反復動作の外力と靱帯の張力が作用して発症するもの、
② 高所からの転落などで、踵を強く突いたときの外力により発症するもの、
後段の「踵骨前方突起骨折」で①を解説しています。ここでは、②転落などによる衝突・圧迫型の骨折を解説します。
足根骨の中で最も大きく、不整な四角形であり、かかとの突出は、この骨の隆起によるものです。
踵骨は、硬い皮質骨の殻のなかに、スポンジのような軟らかい骨、海綿骨が詰まっている構造です。例えれば、和菓子のモナカの構造によく似ているのです。高所からの転落で、モナカを踏み潰したように骨折し、踵骨上面の関節面が落ち込むのです。結果、踵骨の上に位置する距骨との関節が転位し、踵が幅広く、高さが低く変形するのです。
骨折は、主にかかとの後面からの衝撃で発症する陥没型骨折と、かかとの下面からの衝撃で発症する舌状型骨折があります。距骨の突起部が舌のように見えることから、このように呼ばれています。
関節陥没型(上段)と舌状型(下段)
激痛とみるみる内の腫れで、皮下出血も見られ、踵(かかと)の痛みで、立つことも歩くことはできません。
(3)治療
骨折線は関節面におよぶことが多く、転位を残したままでは、重度の機能障害を生じます。踵骨全体像もケーキを押しつぶしたようにペシャンコになり、疼痛や扁平足などにより重篤な歩行障害を残すことが多く、治療が長期化し、非常に厄介な骨折です。
下方に向かって骨折するもの、踵骨後方へ向かって水平に骨折するものがあります。転位のないもの、転位が小さく徒手整復が可能なものは、4~6週のギプス固定となります。
一方、転位があって、徒手整復が困難なときは、手術による整復と固定が実施されています。転位とは、距踵関節部で、ずれることです。
この骨折の形状では、手術による整復と固定が実施されています。骨癒合を完了しても、痛みや腫れが改善しないことが多く、骨癒合後のケアに苦労します。疼痛や腫脹が消失するまで2~3年を要する症例も非常に多く見られます。
また、粉砕骨折や後距踵関節に骨折線がおよんでいる症例では、確実に後遺障害を遺残します。外傷後関節症などで変形を生ずると強い疼痛や歩行障害が残存します。こんなときは、関節固定術が選択されています。
つづく ⇒ 後遺障害