足根骨 外傷性内反足(がいしょうせいないはんそく)


 
(1)病態

 足の裏が内側を向き、外側部だけが地についている状態を内反足といいます。先天性のものが圧倒的ですが、交通事故外傷でも発症しています。

 外傷性内反足に遭遇したときの、被害者10歳、女子の傷病名です。短腓骨筋腱完全断裂、長腓骨筋腱部分断裂、距骨外反、前足・中足部内反、右腓骨遠位端骨折、右腓骨遠位端線損傷、足関節の捻挫に伴って発症するものに、短腓骨筋腱縦断裂があります。

 足の捻挫のあと、いつまで経っても外踝(くるぶし)の後部に疼痛があるときは、短腓骨筋腱断裂が疑われるのです。上図は、オレンジ色が短腓骨筋、青色が長腓骨筋で、どちらも、足首を外へ返す働きをしています。○印は、外踝(くるぶし)の後部ですが、そこでは、長・短腓骨筋腱が並んで走行しています。足首を内側に捻挫したとき、短腓骨筋腱は、長腓骨筋腱と外踝の骨である、腓骨の間に挟まり、ストレスがかかり、縦に断裂することがあります。また、短腓骨筋腱が外踝の後ろで亜脱臼して、縦に断裂することもあります。
 
(2)症状

 外踝の後ろで、短腓骨筋腱が断裂したときは、外踝の後部が腫れ、疼痛を発症します。内反足は、外反扁平足とは逆の、「く」の字の変形をきたします。

 今回は、交通事故による外傷性内反足に遭遇しました。10歳女子の右足は15°内反しており、左右の下腿部の比較で、右下腿が1.5cm筋萎縮しています。足の外側縁の接地であることから、第5中足骨々頭と基部にタコができていました。足の内返しとともに尖足(せんそく)を伴うことが多いのですが、その徴候は認められていません。


 ※ 尖足(せんそく)
 足の変形の一種であり、足の甲側が伸び、足先が下垂したまま元に戻らなくなった状態です。踵(かかと)を地面につけることができないので、足先で歩くことになり、体幹の支持機能に悪影響をおよぼします。尖足では、走れない、長時間歩行後や冬場では、痛みが増強する、跛行、スリッパが脱げるなど、大変に困ります。
 
(3)治療

 懸念されるのは、足関節が内反位にあるため、外果の捻挫が多発して、近い将来、変形性足関節症に発展する可能性が高いことです。現在、治療先は、睡眠時以外は、短下肢装具の装用を指示して矯正しようとしています。

 
短下肢装具(左)  硬性アーチサポート(右)

 この被害者さん、左足関節の機能障害で1011号、外傷性内反足が12級相当、併合9級が認定されました。

 医師からは、睡眠時以外の16時間について短下肢装具の装用が指示されています。が、これで矯正できるとの見通しはありません。外傷性内反足で、10級相当を目標にサポートを続けます。
 
(4)後遺障害のポイント
 
Ⅰ. 外傷性内反足による後遺障害は、等級認定表に定めがありません。足部の後遺障害は、足趾の欠損もしくは用廃、足関節の機能障害が規定されているだけです。本件では、足関節に運動制限は認められていません。したがって、政令別表の規定により、他の後遺障害に準じて等級の認定を求めることになります。先の例では、12級相当と認定されています。
 
Ⅱ. となれば、外傷性内反足により、日常の生活でどのような支障が認められるのか? これらを丹念に立証していかなければなりません。

 ポイントは、短下肢装具による矯正です。16時間も装用しなければならず、全力疾走は不可、僅かな距離の小走りがやっとの状態です。しかし、頑張って歩行訓練を続けないと、筋力は目に見えて低下していきます。私は、外傷性内反足で歩行に支障があり、固定装具の装着を常時、必要としない程度のものであれば、10級相当の認定が妥当であると考えています。自賠責が認めなければ、訴訟での認定を目指すことになります。
 
 つづく ⇒ 医学論文の紹介