前距腓靱帯断裂 (ぜんきょひじんたいだんれつ)

内返し捻挫

 
(0)まず、足関節の主要靭帯を整理します

 かつての無料相談会では、内返しと、外返し捻挫を混同している被害者が、たくさんいらっしゃいました。内返しとは、土踏まずが上を向き、足の裏が、内側に向く捻挫と覚えてください。ゆっくり試してみると、すぐに分かりますが、足裏は、外には向きにくい構造となっており、大多数は内返しに捻るので、外側靭帯を損傷することが多いのです。もちろん、急激、偶然かつ外来の交通事故では、外返し捻挫も、発生しています。

 足首は、下腿骨の脛骨と腓骨で形成されるソケットに、距骨がはまり込む構造となっています。前距腓靱帯(ぜんきょひじんたい)、踵腓靱帯(しょうひじんたい)、後距腓靱帯(こうきょひじんたい)の3つをまとめて外側靱帯と呼んでおり、外くるぶしの下側に付着しています。

 前距腓靭帯は、距骨が前に滑ることを、踵腓靭帯は、距骨が内側に傾斜することを防止しています。足首の捻挫で、損傷頻度が高いのは、前距腓靱帯です。その次は、踵腓靱帯ですが、後距腓靱帯損傷は、滅多に発生しません。

 足首を支える靭帯は外側に、今説明した3本、内側には扇状の大きな靭帯が1本あります。内側の靭帯は、三角靭帯と呼びますが、幅も広く、足の動きの特徴上、不安定性が問題とされることもなく、コットン骨折を除いては、手術が必要とされることは、ほとんどありません。他に、脛骨と腓骨をつなぐ脛腓靭帯があります。
 
 前距腓靱帯断裂 

(1)病態

 内返し捻挫では、腓骨と距骨をつなぐ前距腓靭帯が過度に引っ張られて最初に損傷します。捻りの程度が強いときは、足首外側の踵腓靭帯も損傷することになります。足の捻りによっては、足首の内側靭帯や甲部分の靭帯を損傷することがあります。

 内返し捻挫であっても、靭帯損傷にとどまらず、骨折することがあり、子供では、断裂ではなく、剥離骨折=靭帯の付着する軟骨表面が剥がれることが多く、たかが捻挫と侮ることはできません。
 
(2)症状

 完全断裂では、外くるぶしが腫れ、血腫が溜まり、痛みにより歩くことはできません。
  
(3)診断と治療

 診断では、損傷部位を押し込むことにより、痛み、圧痛の再現を確認します。骨折のあるなしは、XP撮影でチェック、靭帯の断裂による関節の動揺性、不安定性は、ストレスXP撮影を行います。靭帯の損傷、骨内部や軟骨損傷を確認する必要から、MRI検査を行います。

 
 足首を捻る、引っ張るなど、ストレスをかけた状態でXP撮影を行うものです。
 
Ⅰ. 引き延ばされた、 Ⅱ. 部分断裂した、Ⅲ. 完全断裂した・・・損傷レベルは3段階で捉えられます。
 
 問題とされるのは、グレードⅢ、靭帯の完全断裂に対する治療となります。しかしながら、外側靭帯損傷では、早期に適切な治療を行えば手術が必要になることは稀です。つまり治療の基本は保存療法になります。

 保存療法では、固定療法と早期運動療法の2つがあります。固定療法は数週間のギプス固定を主体とした、従来からの治療方法です。主流となっている早期運動療法では、まず、1~2週間について、足関節をギプス固定とします。初期固定を完了すると、ギプスをカットし、リハビリ歩行を開始します。足首外側に負担のかかる、捻り動作を防御する必要から、サポーターを装着、保護します。

 この状態で、3カ月前後のリハビリを継続すれば、後遺障害を残すことなく治癒するのです。また、足首周辺の筋力とともに、固有知覚も充分に回復させることが再発予防のためには重要です。長期間のギプス固定は、固有知覚(※)を弱めることが報告されており、それもあって、早期運動療法が推進されているのです。
 
※ 固有知覚

 関節の位置を認識する感覚、今、関節がどの位曲がっているか、どっちの方向に力がかかっているか、 これらを判断するための感覚です。
 
(4)後遺障害のポイント

 次回の脛腓靱帯損傷で、まとめて解説します。
 
  次回 ⇒ 脛腓靱帯損傷