(4)後遺障害のポイント
 
Ⅰ. 2014年の無料相談会で、この傷病名が記載された診断書を発見しました。

 一般的に、膝離断性骨軟骨炎は、スポーツによるストレスの繰り返しで発症するものであり、交通事故とは関係のない傷病名と理解していました。初診の救急病院の診断書には、左鎖骨骨折、右膝捻挫と記載されています。右膝離断性骨軟骨炎は、最後に診察を受けた医大系膝関節外来の専門医が診断したものです。

 これで、ピンときました。初診の整形外科医は、XPで右膝をチェック、骨折がなかったので、右膝捻挫と診断したのです。「静かにしていれば、その内、治る?」 これでスルーされたのです。

 「なにか、スポーツをやっておられました?」・・被害者は、趣味でジョギングをしていたのですが、事故後1カ月でウォーキングを開始した頃から、右膝に痛みを感じるようになり、3カ月を経過してジョギングに復帰すると、突然の激痛で膝が曲がらなくなったとのことです。ネット検索で医大系病院の膝関節外来を受診、右膝関節離断性骨軟骨炎と診断され、関節鏡視下で修復術を受けたとのことです。

 受傷6カ月で症状固定、膝関節に機能障害はなく、圧痛と動作痛が認められました。左鎖骨骨折で12級5号は問題ないとして、右膝関節は神経症状で14級9号が認定されました。膝に関しては事故との因果関係に疑問が残りますが、14級が併合されても等級が上がりません(併合12級)ので、”ついでに”認定された印象です。
 
Ⅱ. 治療に積極的であれ! ここで、学習すべきことです。

 主治医を盲目的に頼るのではなく、医大系膝関節外来の専門医の診察を受けたことが、早期社会復帰につながりました。しかし、大多数の被害者は、グズグズと漫然治療を続け、この積極性がありません。
 
 「右膝が痛く、歩行にも支障があるのに、主治医が診てくれない?」
 
 交通事故では、加害者に対する呪いからか、こんな不満がタラタラ述べられることが多いのです。怪我をしたことは、加害者側の責任であっても、怪我をした以上、治すのは被害者の責任です。もし放置していれば、徐々に変形性膝関節症の方向に進行していきます。

 遊離した骨軟骨片の損傷や変性が著しくなると、自家培養軟骨の移植術が選択肢として提案されるのですが、受傷から6カ月以上を経過していれば、損保は、治療費等の負担を拒否します。

 では、健保で手術となるのですが、入院3カ月、リハビリ通院4カ月が、許されるでしょうか?


 こんなことを強行すれば、職場におけるあなたの位置は、アザーサイドとなります。

 交通事故では、4カ月以内に職場復帰を果たさないと、その後の人生を失うのです。
 
Ⅲ. 本来、交通事故で、膝離断性骨軟骨炎は想定されていません。

 膝関節捻挫と診断しても、その後の経過で、膝離断性骨軟骨炎を発見すれば、関節鏡視下で修復術が行われ、普通は、後遺障害を残しません。

 問題となるのは、膝関節捻挫と診断され、放置されたときです。後遺障害の対象は、膝関節の可動域制限と膝関節部の痛みです。

 予想される等級は、およそ神経症状の14級9号に留まるはずです。限りなく医原性ですが、事故受傷を契機に痛みが発生し、症状が症状固定まで一貫性を保てば、自賠責も鬼ではないということです。

 12級以上は、器質的損傷の有無が必須で、MRI、CTで立証します。事故との因果関係について審査のハードルは爆上がりとなりますが、痛み=神経症状の12級13号、機能障害で12級7号、となります。12級以上ですと、そもそも膝関節に骨折や靭帯損傷、半月板損傷などを伴っていないと疑われます。
 
 すべての交通事故外傷に言えますが、漫然治療に終始したことについては、反省しなければなりません。
 
 次回 ⇒ 膝蓋前滑液包炎