(4)後遺障害のポイント
Ⅰ. 股関節の機能障害、股関節の痛みが後遺障害の対象となります。
← 屈曲・伸展の角度
← 屈曲の計測
← 伸展の計測
← 外転・内転の角度
← 外転・内転の計測
← 外旋・内旋の角度
Ⅰ.股関節の機能障害について
股関節の主要運動は、① 膝屈曲と伸展 ② 外転と内転の2種類があります。
8級7号では、2つの主要運動の全てで、強直もしくは、それに近い状態でなければなりません。
膝屈曲・伸展と、外転・内転のいずれか一方の主要運動が、健側の2分の1以下に制限されているときは、10級11号が、4分の3以下に制限されているときは、12級7号が認定されます。
穏当に可動域制限の12級をとった例 👉 12級7号:大腿骨頸部骨折(30代男性・徳島県)
※ 10、12級では、膝屈曲・伸展と、外転・内転が、切り離されていることを正しく理解してください。主要運動の合計で+10°となっても、諦めてはいけません。主要運動のいずれかが2分の1に+10°で逃した場合、4分の3に+5°で逃した場合、参考運動の外旋・内旋のいずれかが2分の1もしくは4分の3以下に制限されていれば、それぞれ10級11号、12級7号が認定されます。
◆ 角度だけで、等級を論じるのは、愚の骨頂です。
主要運動の1つが2分の1以下に制限されていても、自賠責・調査事務所は、「どうして2分の1以下なんだろう?」、可動域制限の原因、角度の整合性について、異常なほどにこだわって審査しているからです。本件は骨折ですから、その整合性は、骨折の形状とオペの内容、その後の骨癒合の結果に求めます。
したがって、骨折後の骨癒合は、3DCTで立証します。GradeⅠで骨折線が不明瞭なときは、MRI撮影で立証しなければなりません。正常な癒合を果たしている場合、いくら可動域制限が計測されようと、「そのような高度な可動域制限が生じるものとは捉えられず・・・」と認定されません。やはり、画像が決め手です。立証せざるもの、後遺障害にあらず! 不十分な立証では、等級は薄められてしまいます。
Ⅱ. 人工骨頭または人工関節に置換されたときは、10級11号が認定されます。この立証は、XPで十分です。
ルール上は、人工骨頭または人工関節を挿入置換し、かつ当該関節の可動域が健側の2分の1以下に制限されたときは、8級6号が認定すると規定されていますが、滅多に発生していません。人工関節置換術の技術の向上から、可動域制限を残すことは希少となりました。8級6号では、MRI、3DCTの撮影を受けなければなりません。
人工関節となれば立証は楽です 👉 10級11号:大腿骨頚部骨折 人工関節(70代女性・静岡県)
◆ 症状固定時期について
高齢者以外では、抜釘後に症状固定、後遺障害診断を受けることになります。抜釘のタイミングは、骨癒合が得られた時点であり、常識的には6カ月前後です。早期の症状固定であれば、股関節の機能障害で12級7号が見込めます。
同じことは、高齢者にも言えます。高齢者であれば、抜釘は想定外、痛い思いをしなくても、将来、焼き場で回収すればいいのです。であれば、「完全回復まで示談せん!」と、根性入れてリハビリを続けるのではなく、6カ月を経過した時点で症状固定とするのです。12級を取ってさっさと解決する方が良いのです。仮に股関節の機能障害を残さなかったとしても、痛みや不具合から14級9号を確保します。もちろん、解決後は、健保でじっくりリハビリを継続すればよいのです。
確かに高齢者は骨癒合も時間がかかるものです。だとしても、だらだら1年以上もリハビリを続けた結果・・・非該当、せいぜい14級9号の認定結果で、「なんとかならないか?」と相談にやってきます。本人にしてみれば、1年以上も入通院で苦しんだのに、納得できない感情に振り回されているのですが、漫然治療で、12級7号のハードルを飛び越える改善が得られており、万事休すなのです。相談会では、後悔、先に立たずとお話ししています。
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